国連は12日午後(日本時間13日午前)にウクライナ情勢に関する緊急特別会合を開き、ロシアが一方的に宣言した東部と南部4州の併合について違法と非難し、無効だと宣言する決議案を圧倒的な賛成多数で採択した。賛成は193カ国中143カ国達した。反対はロシアのほかシリア、ニカラグア、北朝鮮、ベラルーシの5カ国。中国を含む35カ国は棄権した。この結果についてロイターは、ロシアの「国際的な孤立が深まった」と解説する。2月に実施された「ロシア非難決議」は賛成が141カ国、今回はこれを2カ国上回った。だが、反対と棄権は前回とまったく同じ。国連が4州の「併合」を認めなかった意義は大きい。とはいえ、ウクライナ侵攻から8カ月が経過、ミサイルによる無差別殺戮や戦争犯罪が数多く表面化している中で実施された採決で、前回同様5カ国が反対し35カ国が棄権に回った。この結果はロシアが依然として一定の影響力を維持している証拠と見た方がいいのではないか。

採決はウクライナ大橋が爆発・炎上、ロシアが報復として無差別にウクライナ全土にミサイル攻撃を行っている中で実施された。ウクライナ戦争そのものはロシアの敗色が濃厚になっている。一部メディアはここにきて、ロシアが一定の条件をつけながらも停戦協議に前向きになっていると報道している。ロイターが12日報道したところによれば、北大西洋条約機構(NATO)の高官は「ロシアがウクライナ侵攻で使用している精密誘導弾薬のかなりの量を使い果たした」と話しているようだ。さらに「西側諸国の制裁によってロシア軍需産業はあらゆる種類の弾薬や兵器システムを生産できない状況に追い込まれている」とも指摘する。これが事実なら戦況は明らかにウクライナに有利。そんな中でロシアは報復と称して無差別攻撃に乗り出している。ウクライナ軍はかつてイラン製ドローを使った「自爆攻撃」について、「ロシア軍の弱さの証拠」と揶揄したことがある。最近のミサイル攻撃もその二の舞か。

苦しくなったロシアはミサイル攻撃や核攻撃の口実を得るためにウクライナ大橋を部分的に破壊したのではないか、ど素人のアンチ・プーチン派としてはそんな邪推もしたくなる。大義のないウクライナ戦争は一刻も早く終わってほしい。世界中の人々が同じ思いを抱いているはずだ。そんな中で気になる動きが芽生えつつある。厳寒の冬を前に欧州で、ロシアに対する経済制裁を解除すべきだとの声が強まっていることだ。ロシアの無差別殺戮は絶対に許さない。だが、西側の経済制裁によって自分達の生活もどんどん苦しくなっている。インフレも想像を超えたスピードで猛威を撒き散らしている。戦争を長引かせているのは米民主党政権ではないかとの疑念が囁かれはじめた。まさにこれはプーチンの待ち望んでいる状況だ。民主化陣営は本当に独裁者で戦争犯罪人のプーチンを倒せるのか、審判の時が迫ってきたようだ。