[ロンドン 25日 ロイター] – 英首相の座に上り詰めたリシ・スナク氏は妻の分と合わせて莫大な資産を保有し、同国史上最も裕福な首相となった。その富豪ぶりは、経済危機に苦しみ、国民に痛みを強いる財政引き締めが検討されている英国の状況と極めて対照的で、野党から攻撃の材料となっている

英紙サンデー・タイムズが5月に発表した国内長者番付によると、スナク夫妻は保有する純資産が7億3000万ポンド(8億3700万ドル)で222位となり、第一線の政治家としては1989年の番付発表以来初めてリスト入りした。

ワールド・レコーズのギネスブックによると、これまで英首相として最も保有資産が多かったのは19世紀に首相を務めたエドワード・スタンリー氏の700万ポンドで、現在の価値に換算すると約4億5000万ポンド。スナク夫妻の資産はこれを大幅に上回る。

スナク氏は8月にイングランド北部ダーリントンで行われた保守党党首選の演説会で、エリザベス女王よりも金持ちで民衆とどう関わるのかと質問された際に、裕福だという理由で批判すべきではないと反論。「この国では、人は銀行口座(の残高)ではなく人柄や行動で判断されるのだと思う。私が今のような身上であるのは幸運なことだが、生まれつきではない」と述べた。

「両親は懸命に働き、私にこうした全ての機会を与えてくれた。両親がしてくれたことについて謝罪するつもりはない。実際のところ私がこの職務を目指すのは、他のあらゆる人々にこうしたチャンスをもたらしたいからだ」

スナク氏は、経済政策で市場を混乱させたトラス前首相が史上最も短い在任期間で辞任したことで首相の座をつかんだ。しかし、反対勢力はスナク氏がかつて政治的苦境に陥る要因となったその富豪ぶりに焦点を当てようとしている。スナク氏が英国の前途に大きな試練が待ち構えていると警告していることを踏まえた動きだ。

欧州連合(EU)寄りの立場を取る自由民主党のエド・デービー党首は「スナク氏の言葉で、この冬を心配している生活に困った人が安心することは全くないだろう」と強調。スナク氏は「実体を知らない」と攻撃した。

<妻の税逃れ問題>

スナク氏はエリート校であるウィンチェスター・カレッジで教育を受けた後、オックスフォード大学で政治学、哲学、経済学を修めた。父親は医師、母親は薬剤師。家業の薬局の給与計算を手伝ったことが経済的なリテラシーの始まりだと説明するのを好む。大学卒業後、証券大手ゴールドマン・サックスのアナリストやヘッジファンドを経て政界入りした。

ただ、スナク氏の金融界での華麗な経歴にもかかわらず、夫妻の資産の大部分は、元々は妻のアクシャタ・ムルティさんのものだった。

24日に発表された世論調査によると、有権者にスナク氏を表す単語を尋ねたところ、もっとも多い回答は「金持ち(リッチ)」だった。

25日に「スナク氏は英国民のためにベストを尽くすと確信している」と述べた義父は、フォーブス誌の長者番付で資産が45億ドルとされている。

ムルティさんはインド国籍で、インドのIT大手インフォシスの株式の0.93%を保有している。この株式の評価額は約7億2100万ドルだ。

スナク夫妻は4月、ムルティさんが英国の非居住者として海外での所得への課税を逃れていると批判を浴び、国民の怒りを買った。ムルティさんはその後、非居住者として扱われることを取りやめ、英国で納税すると表明した。

スナク氏は当時、義父の財産や妻の税金に関する追求は、政治的な動機によって自分にダメージを与えようとするものだと述べていた。

しかしスナク氏が首相の座に就いたことで、野党労働党は税制上の非居住者優遇措置の廃止を打ち出し、スナク氏の財務相としての仕事ぶりや個人的な財産の取り扱いを批判している。

労働党のアンジェラ・レイナー副党首は24日に発表した声明で、新首相について「財務相として経済成長に失敗し、インフレの抑制に失敗し、保守党が招いた生活危機の負担に苦しんでいる世帯の支援に失敗したリシ・スナク氏なのだ」と指摘。「他の人々に増税する前に、家族でこの国への納税を逃れていたリシ・スナク氏なのだ」と批判した。

(Alistair Smout記者)