米国の暗号資産取引所を運営するT F Xが資金繰りに窮して破綻した。暗号資産業界のビックニュース。米国ではさまざまなメディアがこの倒産劇を報道しているようだ。日本でもネットを中心に一部の人たちの間で倒産に至る経緯などを巡って情報合戦が続いている。情報が錯綜していて何がどうなったのか、実のところよくわからない。とりあえず現時点でわかっていることを羅列しておく。筆者がこの情報に興味を持ったのは米国の元財務長官であるサマーズ氏による次の発言だ。「この事件はリーマン危機に例える人が多いが、どちらかというとエンロンだろう。報道に基けば不正の匂いが漂う」。ブルーバーグのインタビューで語ったものだ。さらに、かのイーロン・マスク氏も「私のデタラメ発見メーターが動き出した」とツイートしている。何やら事件の雰囲気が漂う。

T F Xは世界を代表する暗号資産取引所。創業者であるサム・バンクマン・フリード(S B F)氏は暗号資産業界を代表するような大富豪。暗号資産の普及活を主導していた人だ。特異なキャラクターから人気も人望もあったと言われる。そのT F Xからある日突然60億ドルという巨額の資金が消えてなくなった。経営危機に陥ったT F Xは危機回避に向けて支援者を探す。そこに登場するのがバイナリーという業界最大の暗号資産取引所だ。C E Oであるチャンポン・ジャオ(趙長鵬)氏は、一度はT F Xの買収を決意する。だが、資産内容を精査した結果「T F Xの財務に巨大な穴がある」ことに気づき、即座に買収を撤回してしまう。行き詰まったT F Xは米連邦破産法11条を適用、裁判所に破綻を申請した。というのがこれまでの大まかな経緯だ。

何が問題か。消えた60億ドルの行方が第1。関連倒産を含め暗号資産業界への影響や今後の展開が第2の問題。いずれにしても巨大詐欺事件に発展したエンロン事件同様、事件性を含めた全容の解明が必要になる。これにとどまれば話題になった経済事件程度でことは収まるだろう。だがS N Sでは不穏な憶測がいくつも囁かれている。S B Fが民主党ならびにウクライナ政府へ巨額な政治献金を行なっていたこと。ウクライナ政府と連携して暗号資産の運用契約を結んでいたこと。中にはバイデン大統領がウクライナ政府と親しい関係にあることを強調する情報まである。一説にはマネーロンダリング疑惑も囁かれている。すでに関係当局が実態の解明に乗り出している。複雑な背後関係など興味深い経済事件だが、日本のメディはほとんど報道していない。