ウクライナ南部のザポロジエ原発=9月11日、エネルホダル(AFP時事)
ウクライナ南部のザポロジエ原発=9月11日、エネルホダル(AFP時事)

 ロシア軍がウクライナ南部で占領しているザポロジエ原発に関し、独立系メディア「メドゥーザ」は2日、ウクライナ領内でロシア産石油・天然ガスの安全なパイプライン輸送が保証されれば、プーチン政権が原発撤退を決める可能性があると伝えた。大統領府関係者らの話としている。

 ザポロジエ原発は欧州最大規模。ロシア軍が2月の侵攻開始から間もなく制圧しており、砲撃に巻き込まれれば、核惨事につながりかねないと懸念が高まっている。

 メドゥーザによると、ウクライナに引き渡す案と、国際原子力機関(IAEA)の管理に移す案が検討されているという。プーチン大統領は10月、ザポロジエ原発を「国有化」する大統領令に署名しているが、ロシア軍が実際に撤退すれば、事故のリスクは低減することになりそうだ。

 伝えられた関係者の証言では、エネルギー輸出で国庫を潤すのが動機の一つ。原発から撤退した後、ザポロジエ州の占領地をすべて手放すシナリオは検討されていないという。ザポロジエ州は南部ヘルソン州と同様、東部ドネツク州から南部クリミア半島までの支配地域をつなげる「陸の回廊」に位置している。

 ウクライナ国営原子力企業エネルゴアトムのコティン総裁は11月27日、ロシア軍がザポロジエ原発を撤退する兆候が見られると地元メディアに指摘した。ロシアのペスコフ大統領報道官は28日、「(兆候は)ないし、あり得ない」と全面的に否定していた。