[ワシントン 8日 ロイター] – 米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるカート・キャンベル氏は8日、中国は国内の経済的課題と断定的な外交に対するアジア域内の反発に直面する中で、短期的に米国との関係を安定させることを望んでいると述べた。

キャンベル氏はワシントンで開かれたアスペン・インスティテュートの安全保障フォーラムで、中国が日本やインドなどと抱える領土問題に言及し「中国は同時に多くの国に対し挑戦してきた」とし、「これが裏目に出ていると認識している可能性がある」と指摘。「これら全ては、中国が現在、米国との公然たる敵対関係を回避したいと考えている可能性があることを示唆している。中国はある程度の予測可能性と安定性を求めており、われわれもそれを求めている」と述べた。

その上で、向こう数カ月で米中の「より実際的で予測可能な」外交が再開される可能性があると予想。「この地域全体の安心につながる展開が見られるだろう」と述べた。ただ詳細については明らかにしなかった。

また、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、インド太平洋地域で台湾の平和と安定の維持を巡る水面下の議論が活発化したと指摘。「何らかの事態が発生すれば、戦略面、通商面で著しい結果が招かれ、誰の利益にもならない。このため、どの国もこの微妙な状況を理解していると考えている」と語った。

これとは別に、米国防総省のエリー・ラトナー・インド太平洋安全保障担当国防次官補は、2023年はインド太平洋地域における米国の軍事体制にとって、ここ一世代で最も変化の多い年になる可能性が高いと指摘。域内の同盟国であるフィリピンやオーストラリアとの協力を強調しながら「人々が長い間求めてきた戦略的コミットメントを果たすことになる」とした。

キャンベル氏は、インド太平洋地域における米国の外交、諜報、軍事能力が現在限られていることを指摘した上で、「それを構築するのは並大抵のことではない。相当な時間がかかるだろう」とした。

オーストラリアのアーサー・シノディノス駐ワシントン大使は、日本は将来的にオーストラリア北部での軍事力構想により関与することになるとした。

英国のカレン・ピアス駐ワシントン大使は「中国の活動から生じ得るいかなる事象にも対応できるよう、必要と思われるほど多くのメカニズムがないため」中国との間に誤算や誤解が生じるリスクがあると指摘。「冷戦時代のソ連と比べれば、その不足は明らか」とした。