23日、中国・上海の病院前に設けられた発熱診療所(EPA時事)
23日、中国・上海の病院前に設けられた発熱診療所(EPA時事)

 【北京時事】中国国家衛生健康委員会は25日、毎日行っている新型コロナウイルス感染者と死者数の公表機関を変更すると発表した。今後は下部機関に当たる中国疾病予防コントロールセンターが「参照と研究用」に情報提供すると説明、その後、実際に発表された。公表主体の「格下げ」は、コロナ禍への中国当局の姿勢に対する不信感を強める恐れもある。

中国、感染者数公表取りやめ 実態把握できず―新型コロナ

 発表主体変更の理由には触れていない。爆発的な感染拡大が続く中国では、かねて政府による公式発表の数字が実態を反映していないと不満が広がっていた。今回の変更は、正確な感染者数の把握を重視していない中国当局の姿勢を示しているもようだ。

 センターが25日に公表した最新の死者数は「ゼロ」。感染者数は2940人だった。世界保健機関(WHO)や米国が正確な情報共有を求める中、いずれも実態と懸け離れているという批判が高まることが予想される。

 流出した中国当局の内部文書として報じられたところによると、今月1~20日だけで中国総人口の2割近い2億4800万人が感染したと見積もられている。一部の地方都市は感染者数の推計公表に踏み切っており、山東省青島市では人口の5%前後に当たる49万~53万人が連日感染。1000万人の人口を抱え日系企業も多く進出する広東省東莞市では、25万~30万人が毎日感染しているという。各地の医療機関の逼迫(ひっぱく)も深刻で、浙江省杭州市の発熱外来の受診者は今月5日時点の4000人から直近で5万人に増えた。

 著名人への感染も広がっており、香港メディア「香港01」は23日、中国外務省の趙立堅副報道局長が感染した疑いがあると報じた。趙氏は毎日行われる記者会見で内外メディアに接する外務省の「顔」の一人だが、今月2日を最後に会見に現れていない。

 中国では3年近く続けられた「ゼロコロナ」政策が破綻し、短期間で感染者と死者が急増。当局は今月14日に無症状感染者数の公表を取りやめ、20日には、明確なコロナ感染による肺炎や呼吸不全以外は関連死に含めないと新たな独自基準を明らかにしていた。