植竹知子

[東京 6日 ロイター] – 日本の新発10年国債金利が0.5%に上昇した。日銀は昨年12月20日に長期金利の許容変動幅を拡大したが、約2週間半で「上限」に到達した格好だ。市場では、海外金利が急低下しない限り、海外勢を中心とした円債売りが断続的に続く「日銀アタック」が再燃するとの見方が出ている。

日本国債(JGB)市場では6日、10年債の369回債が長期金利の指標銘柄となった。その利回りが早速、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)許容変動幅の上限である0.5%を付けた。

大和証券の佐藤一哉債券ストラテジストは、昨年6月や10月に見られたような激しい攻防戦が再び起きやすくなったとみる。「17─18日の日銀会合に向けてまたひと悶着ある可能性もある。基本的には日銀が各種オペを総動員して抑えることが可能だが、売りと買いがぶつかる攻防戦がしばらく続くのではないか」という。

日本国債のイールドカーブ(金利曲線)は、許容変動幅拡大後も9─10年付近がへこんだ歪な形状が続いており、相対的に割高感があることを示している。日銀は連日、臨時の国債買い入れオペや2年物の共通担保オペなどを実施して金利上昇抑制を図っているが、投資家からは、アンダーウェートを維持しているとの声が聞かれる。

米大手運用会社の債券ディレクターは、長期金利が今後低下するよりも、0.75%や1%に向かって上昇するリスクが大きい状況下では投資家が0.5%で積極的に買うインセンティブは特にないと指摘。「大企業中心に3%超の賃上げが行われ、インフレの上振れや中国の経済再開の恩恵もあって、今年の日本経済は悪くなさそうだ。日銀もどこかでYCCの変動幅拡大やマイナス金利の解除を行う可能性がある」とみる。

12月の政策修正について、黒田東彦日銀総裁は「出口の一歩では全くない」と明言するが、市場とのコミュニケーションが不十分なサプライズであったことから「マーケット参加者の多くは疑心暗鬼になっている」(国内証券のセールス担当者)という。

野村証券の松沢中チーフ・マクロストラテジストは、日銀はパンドラの箱を開けてしまったと指摘。「12月のロジックに基づけば、市場にさらなる政策修正の思惑が出れば、変動幅のさらなる拡大もあるかもしれない。日銀は意図せずして、YCC撤廃に向けた事実上の一歩を踏み出したのではないか」と話している。

(植竹知子 編集:伊賀大記)