児童手当の年齢制限撤廃が俄かに現実味を帯びてきた。自民党の茂木幹事長が1月25日の衆院本会議の代表質問で提案、その後もテレビやネットを通じてこの問題に前向きな発言を繰り返している。茂木氏といえば民主党政権時代に所得制限を強く主張していた人物だ。時代が変わり政権が変わり、今度は制限撤廃と主張し始めた。この間の事情をYAHOOニュースがわかりやすく記事にしている。29日にNHKの日曜討論に出席した際に、同席した立憲民主党の岡田幹事長から「反省してください」と指摘されると、「反省します」と即答したという。なんと反省の弁の軽いこと。軽いというよりも軽蔑に値するような発言だ。政策変更自体を否定するものではい。だがこの発言を「所得制限なしで月5000円給付」を年初に打ち出した小池都知事との政策と対比させてみると、茂木幹事長の狙いが浮き彫りになる。

岸田総理は「異次元の少子化対策」といった。幹事長は「所得制限の撤廃」である。小池知事を意識しているとはいいたくないが、「政府の施策対応は遅い」とあからさまに批判されていることを勘案すれば、意識しているのは明らかに小池氏だろう。4月には統一地方選挙も控えている。過去の発言を忘れたわけはないだろうが、「反省します」と即答するあたりに、なりふり構わず政策転換に踏み切った茂木氏の幹事長としての焦りが透けて見える。世耕参院幹事長は「政党にとって政策の優先順位や賛否は、時間や情勢により変化がありうるものだ」と茂木氏を擁護する。仮にそうだとしても「ではこの10年、自民党はどうして所得制限の撤廃を考えなかったのか」と問いたくなる。弁はたつ。だが、内実がない。西村経産省は昨日の予算委員会で「高所得者に配るよりも、厳しい状況にある人を支援すべきだ」と、制限撤廃に否定的な見解を示している。こちらの方が真っ当に見えてくる。

以下、YAHOOニュースからの転載。「旧民主党政権時代の2010年4月から、『子ども手当』として、0歳~中学校卒業まで、子ども1人あたり月1万3000円が所得制限なしで支給されたが、当時、野党だった自民党は『バラマキだ』などと猛批判。茂木氏は、2011年8月2日の衆院財務金融委員会で、当時の大塚耕平・厚生労働副大臣に対し、「子育ての支援策、財源がいくらでもあれば、私もやることについては反対じゃありませんけれど、これだけ厳しい財政状況のなかで見直しは必要だ、我々はやはりかなりなレベルの所得制限が必要だと思っております」。いやはや、厳しい財政状況は変わらない。茂木氏ならびに自民党には政策を先取りする意識はまるでない。 10年前は打倒民主党、今回は小池対抗意識。国民よりも政権維持が目的の政策転換。それでも自民党が支持されている。どうしてだろう?