米国とカナダ上空を通過した気球が米軍によって相次いで撃墜されている。最初に撃墜された気球は中国が自国のものであることを認めているが、これまでに発覚した残る3つの気球についてはいまのところその正体は不明である。機体の回収が行われ、いずれ何らかの事実が判明するだろう。偵察気球の飛来目的など全容は調査結果を待つしかない。気になるのは同じことが日本の上空で起こった場合どうなるか、という点だ。メディアによると米国で最初に撃墜された気球と類似の気球が、2020年6月に日本上空で確認されている。この時は、河野防衛大臣(当時)が「安全保障に影響がない」として、監視を継続しただけだという。ウクライナ戦争を見るまでもなく、世界中の安全保障が不穏な空気に包まれている。日本に飛来したことを想定してメディアはどんな記事を書いているのだろうか、気になるところだ。

新聞など主要メディアの定期購読を止めてしまった関係で、頼るのはネットの情報だけ。時事ドットコムによると、「自衛隊法は領空侵犯した航空機などに対し、強制着陸や退去をさせるため必要な措置が取れると規定。緊急避難や正当防衛に該当する場合は武器使用も可能だ。航空自衛隊は同法に基づき、戦闘機の緊急発進(スクランブル)で警戒監視に当たっている。通常は領空外側の防空識別圏で進路変更を求め、従わず領空に侵入すれば警告射撃など強制的な措置を取るという流れで対応。相手が無人でも同様の手順という」と現状の枠組みを説明する。手順自体は有人飛行体を想定したものだが、無人でも同様の対応になるとある。専門家によると有人の場合はまず①無線で領空侵犯の事実を伝えて警告し、次に②領空外への退去または近隣の空港への着陸を命じる。従わない場合は③機体への命中を避ける形で発砲する「信号射撃」を行う。それでも無視された場合に「撃墜」するとある。

気球に限らず無人のドローンや気球の場合はどうするのか。同じ手順と言っても①〜③の手順は全く通用しない。いきなり④に頼るしかない。米国の場合はバイデン大統領が撃墜命令を出している。日本は航空自衛隊が独自の判断で撃墜するのだろうか。国会ではいま「2023年-27年度防衛力整備計画」の審議が行われている。日本の防衛予算を現行(5年間)の17兆1700億円から43兆5000億円に増強する。この計画に付随して財源をどうするか、増税は是か非か。カネ目の話がクローズアップされている。だが、気球の撃墜を誰が命令するのか、具体的な防衛策になると一向に議論にならない。メディアも増強する防衛力の中身の議論を避けているようにみえる。自衛隊に限らず日本では常に規則やマニュアルが重視される。無人の気球に向かって戦闘機のパイロットが、無線で警告を発するような事態が起こらないとも限らない。気球報道を見ながら気になった点だ。