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 エネルギー価格などのコスト上昇の価格転嫁が、中小企業庁のアンケートで「最低」の評価だった日本郵便。ゆうパックを配達する下請け業者からは「価格の引き上げを頼んでも断られた」との証言が相次ぐ。全国で郵便局を営む日本郵便は実態把握を急いでいる。

 朝日新聞はゆうパックの配達を請け負っていると取材で判明した9都道府県の10事業者に、郵便局の取引価格について話を聞いた。

 過去3年に取引価格の引き上げを求めたと証言する業者は5社あった。ドライバー不足やガソリン価格の上昇がおもな理由だが、郵便局の局長や担当幹部から「現場の郵便局では決められない」「支社の判断なので値上げには応じられない」などと断られたという。

 値上げしたくても要請を控えるという業者も複数あった。「契約を切られたら困る」「荷物の単価より物量確保が優先」といった理由が挙げられた。

 過去3年に取引価格が上がった業者は一つもなかった。逆に同時期に繁忙手当の縮小や撤廃が進んでおり、「実質的には価格の引き下げだ」と訴える業者が少なくない。

 日本郵便は朝日新聞の取材に、「2月末までに集配関係の契約について自主点検し、その状況を精査している」と回答した。

 中企庁が中小企業を対象に行ったアンケートでは、日本郵便の昨年の価格転嫁は下請け10社の平均で「ゼロ点未満」だった。公表された発注元約150社で唯一のマイナス評価で、「コストが上昇しているのに取引価格は減額された」と評価されたことを意味する。

 この結果を受け、日本郵便は全国約7700件の契約を対象に、過去の要望実態を自主調査すると表明。対象はゆうパックの下請け業者が中心で、不当に価格転嫁を拒んだケースなどがないかを調べている。(藤田知也)