財務省は3日、2022年度の一般会計決算を発表した。それによると税収は71兆1374億円となり、前年度比4兆995億円増加、3年連続で過去最高を更新した。税収が70兆円台に乗るのも初めて。歳入から歳出を差し引いた決算剰余金は2兆6294億円に達する見込み。このうち半分は国債の償還にあてられるが、残りは防衛費に充当される見通し。大幅な税収増の要因は物価上昇と円安。企業は物価高に伴うコストを価格に転嫁し、金額ベースの売り上げが増え結果的に法人税も増えた。消費者は物価上昇に汲々としながら節約に努めたものの、単価の上昇で消費そのものは金額ベースでは増える。だから消費税も増える。所得税も高額所得者中心に増加した。日本経済が好転しているわけではないが、物価が上がり円安になれば税収は増える。22年度決算は見掛け上良くなっているようにみえるだけだ。

コロナも終息に向かい、インフレもどうやらピークを打ちそうな気配が見える。これを受けて歳出の必要がなくなった予算が過去最高になった。NHKによると「予備費などで支出の必要がない『不用』が11兆3084億円と過去最大となりました。その結果、決算剰余金は過去2番目に大きい2兆6294億円になりました」としている。決算から見るかぎり、日本経済は順調に回復しているように見える。にもかかわらず一般消費者・国民には景気が回復しているという実感はほとんどないない。どうしてだろうか。たとえば総務省が発表している家計調査をみると、4月の実質消費は2人以上の世帯で前年同月比4.4%減少している。一方収入は「名目」で1年前に比べ2.6%増えたが、物価の上昇を加味した「実質」では1.4%減少。7か月連続のマイナスで物価高に賃金が追い付かない実態を示している。

一般会計に剰余金が出ているのに、家計収入は7カ月連続で実質的に減少している。このギャップに日本経済の深刻さが隠されている気がする。政府・日銀は「デフレ体質」に原因を求めようとする。だからゼロ金利に近い異次元緩和をいまだに続けている。ゼロ金利で財政の金利負担は軽減されるが、消費者の預金金利もほとんどゼロだ。企業の利子負担は軽減され、低金利に伴う円安で業績だけは表面的に増益になる。だがこの利益もデフレを理由に内部留保に回され、ベアは雀の涙に抑えられてしまう。今春闘でその流れは少し変わったが、これが来年度も続く保証はどこにもない。政府・日銀がデフレ体質を強調すればするほど、賃上げは抑制されるだろう。なんのことはない、異次元緩和が続くかぎり得をするのは政府で、国民は汲々とした生活を余儀なくされる。金利を上げて円高に誘導し、経済の競争力を強化しないかぎり、国民は豊かにならない。