ジャニー喜多川氏の性加害問題は、問題の本質である被害者の救済や再発防止策をそっちのけにして、FTIコンサルティングが作成した「NGリスト」の責任追及に関係者の関心が移ってしまったようにみえる。メディアの責任追求は時として、問題の焦点を曖昧にするという副次的効果がある。記者会見の成り行きから派生した付随的な問題に過ぎない「NGリスト」、メディアは寄ってたかってジャニーズ問題の焦点ずらしを狙っているのではないか、そんな勘繰りまでしたくなる。意図的だとは思わないが、無意識のうちにそうした流れを作り出してしまうメディアの現状に、ある種の危機感すら感じる。テレビの情報番組を見ていると、「NGリスト」そのものを「悪」と断定しているようにみえる。そうだろうか。コンサル会社は金をもらって企業の味方をするのが仕事である。NGリストの作成は仕事の一部でもある。だが、それが発覚するという事態は、コンサル会社の“失態”であり、メディア対策コンサルとしては失格だろう。

個人的な拙い経験にすぎないが、ある時、取材先の大企業のメディア担当の役員から「評価リスト」なるものを見せてもらったことがある。新聞、テレビ、雑誌などのメディアの一覧表と所属の記者名が記載されていた。それだけなら単なる一覧表にすぎないが、記者名の頭に◯×△の評価が付記されていた。「×印の記者をどう扱うか、ここが企業広報の評価を分けるのです」。評価自体は当該役員が個人的につけたものだろう。そこだけは手書きだった。要するに企業はメディアや記者を常に評価しているのだ。営利を目的とした企業にとって当たり前のことであり、コンサル会社が企業のためにNGリストを作成することも良くあることだ。良い悪いではない。企業にとって、あるいはコンサルにとって、「NGリスト」は普通のことにすぎない。問題はこれをどう扱うか、それによって発表主体ならびにコンサルの評価がわかれるのだ。

報道によると新会社の副社長に就任した井ノ原氏は、NGリストに記載されている

記者について「指名しないとダメですよ」と発言したという。これが事務所の共通認識だとすれば、あえてコンサルを入れる必要はなかった。自分たちの責任で、正直に会見をすれば済んだ話だ。それだけにコンサル企業の責任は重い。ググってみた。FTI コンサルティングは、「アメリカ合衆国のワシントンDCに本社を置く世界有数の金融コンサルティングファームの1つであり、最高峰のグローバル経営コンサルティングファーム。日本市場に参入したのは昨年」とある。巨大なコンサル企業だが、日本に進出してまだ日が浅い。日本のメディアや記者会見の実態をよく知らなかったのではないか。金融コンサルとしては一流かもしれないが、メディアコンサルとしては三流以下だ。事務所に責任があるとすれば、巨大コンサルに盲目的に頼り、その実態を見抜けなかったことだろう。

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