岸田首相はきょうの午後の臨時閣議で懸案となっていた経済対策を閣議決定する。臨時国会の冒頭で不評だった所得税減税はそのまま実施され、消費税の減税はなし。要するに国会の議論は経済対策に何一つ盛り込まれなかったということだ。いまさら国会不用論を強調するつもりはない。今朝の政府与党政策懇談会に示された原案によると今回の対策の財政規模は、所得税などの定額減税による「還元策」や関連経費を合わせて17兆円台前半程度になるという。このうち所得税減税や低所得者を対象とした給付の財源は総額で約5兆円にすぎない。残りの12兆円は物価対策、持続的賃上げ対策、投資促進策などと称して企業や役所、基金などにまわる。経済対策の趣旨は物価高騰にともなう国民生活の逼迫に対する支援と銘打っているが、真の狙いは企業や役所、巡り巡って与党政治家の支援策でしかない、ということだろう。

東京新聞が31日に掲載した記事がそれを象徴している。タイトルは「こんなに必要なのか?『国の基金』16.6兆円 コロナ禍前の7倍、原資は赤字国債…国民の負担も膨張」。中身は国が運営している各種基金の残高が急増しているというものだ。そもそも基金というのは特定の事業を遂行するために、国が予算を拠出して基金として事業を執行するというものだ。その数は現在総計で190に達しているという。問題はそこに蓄積されている金額だ。東京新聞によると「2兆円台で推移していた残高は、コロナ対策などの名目で20年度末から急増し、今年3月末時点で約16兆6000億円に達した」とある。今回の経済再策でさらに上乗せされる。事業をおこなうために必要な財源を国が手当している。だが、基金になると資金や事業の管理が甘くなり、必要とされる事業に資金は回らないケースもあるようだ。

しかも、基金を運営するための人件費など必要経費は基金が負担している。国は不用となった資金は国庫に返却するよう要請しているようだが、「返納額は20年度に746億円、21年度に5488億円、22年度は251億円にとどまる」(東京新聞)。21年度はコロナ最盛期で未使用のワクチン代などが国庫に返却されたが、それを除くと各基金とも「国庫返納には後ろ向き」(同)だという。基金全体が悪いと言いたいわけではないが、資金の使い途に比較的制約がない基金に業界や役人の思惑が絡んで、経済対策に群がるように基金が創設されている。要するにかなり不透明なのだ。基金の中には事業そのものをほとんど行っていないものもあるという。所信表明演説で「経済、経済、経済」と連呼し“経済通”を自称する岸田首相だが、ここでも改めて物価対策の“真意”が問われてします。

参考までに東京新聞に掲載された図表を転載する。

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