安倍派の裏金づくりを受けて自民党の岸田総裁は先週、党内の主要メンバーを集めて「政治刷新本部」(本部委長・岸田総裁)を立ち上げた。メンバーは老壮青取り混ぜて38人。うち10人が安倍派に所属する。テレビの情報番組でこの人選について聞かれた政治評論家の田崎史郎氏は「各年齢層から適材を選出すると、100人を超える安倍派が一番多くなる」と解説していた。その10人のうち9人が派閥からキックバックを受けていたと13日にメディアが報道した。誰がリークしたのか分からないが、主要メディアに同じ情報が掲載された。リーク元は推して知るべしか?報道を受けて質問された岸田総理、「メンバーを入れ替える予定はない」との趣旨の発言をしている。例えは悪いが泥棒を交えて縄をなうようなものである。ことが起こって対策の検討を始める岸田総裁のまさにドロナワ。この人の底の浅さがまた露呈した。

今朝テレビを見ていたら政治刷新本部の刷新が必要だと某コメンテーターが解説していた。それを聞きながら頭の片隅に殺伐とした冷たく凍てつくような冷気が流れた。メンバーの人選もそれを解説するベテラン政治評論家も、テレビに出演したその筋のコメンテーターにも、なんの危機感もない。おそらく自民党と共に終焉が近いている人たちだろう。ズレてるのは岸田総理だけではない。政治を取り巻く多くの関係者が、日本の危機を感じない「無感症」に陥っているのだ。同じ日にメディアは「安倍派幹部5人は起訴しない方針だ」と東京地検特捜部のリーク情報を伝えている。ここまでくると政治サイドだけではない。年末年始返上で、地方から大量の検事を招集し政治の中枢にメスを入れようとした特捜部は、「なんのために最大派閥に手を突っ込んだのだ」、そんな疑問が湧いてくる。地検は地検で自らの存在理由を世間にアッピールしただけではないか?

これで“巨悪”にメスが入るのだろうか。パーティー券疑惑の本質は何か?国民のために切磋琢磨するはずの派閥が、金集めのための「闇サイト」と化したことだ。個人の政治家だけを裁いても意味がない。まして裏金の多寡であろうはずもない。深淵は政治家の資質、簡単にいえば派閥全員が嘘をついていることだ。その嘘を承知の上でメンバーを指名する総理・総裁。刷新本部を刷新せよと虚妄のうえに虚妄を重ねるコメンテーター。今更何をいわんやだ。派閥では不十分だ。嘘つき自民党を解体せよ。たまたま読んでいた「福翁自伝」に次の一説があった。「仮初(かりそめ)にも弱いものいじめをせず、仮初にも人の物を貪らず、人の金を借用せず、品行は清浄(しょうじょう)潔白にして俯仰(ふぎょう)天地に愧(はじ)ず」と。終生の大半を在野で過ごした福沢諭吉の自慢話だ。おそらくこれが「独立自尊」ということだろう。“天地に愧じる自民党”、終焉の時が来た。

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