• 制裁対象の中型タンカー「Rich Starry」、米封鎖を最初に試した1隻に
  • 別の制裁対象タンカーは海峡出たところで停止、イラン寄港後
Photographer: Bloomberg/Bloomberg Economics

Weilun Soon

米国はホルムズ海峡封鎖の初日、米軍の指示に従い商船6隻が引き返し、イランの港に再入港したと発表した。トレーダーらは封鎖突破を試みる動きが出るか注視している。

  米中央軍はX(旧ツイッター)への投稿で、十数隻の軍艦と1万人の要員で構成される封鎖を突破した船舶はなかったと明らかにした。米国はオマーン湾とアラビア海で措置を実施し、ペルシャ湾から出航しようとするイラン船舶を待ち構えている。これは、ホルムズ海峡を通過できた船舶であっても、封鎖を突破したことにはならないことを意味する。

  これに先立ち、米国の制裁対象となっている中国関連のタンカーがホルムズ海峡を通過したが、再び海峡に戻った様子だ。このタンカーは、トランプ米大統領の海上封鎖を最初に試した1隻として注目を集めている。

問題の船は「Rich Starry」という名称の中型タンカー。ブルームバーグがまとめた船舶追跡データによると、同船は14日未明にホルムズ海峡を航行し、同日中に通過を完了した様子だった。だが、オマーン湾に入ったところでUターンした。

  このタンカーはかつて「Full Star」との船名で、イランのエネルギー制裁回避を支援したとして2023年に米政府の制裁リストに掲載された。今回の航行に先立ちイランの港に寄港していたかどうか、また原油を積み込んでいるかどうかは不明。

Rich Starry tanker U-turns after crossing Hormuz.
Rich Starryの航路。ホルムズ海峡を通過した後にUターンした

  米国はイランに対する圧力を強めようと、ホルムズ海峡を含むイラン南部沿岸を全面的に封鎖したと発表した。それが実際にどのように機能するのか把握しようと、船主やエネルギー関連のトレーダー、各金融市場の投資家は海峡の通航状況を注視している。

  ただ、海峡付近では電波の妨害や偽装が頻繁に行われているため、正確な監視は困難だ。衛星データを利用して船舶の動きを追跡するタンカー・トラッカーズ・ドット・コムによると、Rich Starryは衛星信号を偽装した前歴がある。

  米国はオマーン湾とアラビア海を封鎖し、ペルシャ湾を出ようとするイランの船舶を待ち構えている。

  Rich Starryが引き返すのは初めてではない。13日には1回目の海峡通過を試みようとして引き返し、その数時間後に2回目の通過に挑んでいた。

  「問題の核心は、単に船舶の海峡通過が可能かではなく、米艦船がどのような封鎖措置をとり、どこでそれを実行するかという点にある」と、対イランの米圧力団体「United Against Nuclear Iran」の顧問、チャーリー・ブラウン氏は述べた。

  2回目のUターン後、同船は目的地を「指示待ち」とするシグナルに変えた。それ以前は目的地をオマーンのソハールとし、中国の所有で中国の乗組員がいることを示す信号を発信していた。

  別のタンカー、「Elpis」は封鎖開始時に海峡通過中で、オマーン湾へと向かっていたが、イラン沖の海峡を出たところで停止した。船舶追跡プラットフォームのケプラーおよびボルテクサによると、同船はペルシャ湾内のイラン港に寄港しており、米国の封鎖対象になる。

  Elpisが停止したのは、Rich Starryが引き返したのとほぼ同じ地点だ。数時間にわたり信号を発信しておらず、そのまま航海を続けたが、引き返した可能性がある。

  同船はまたイランの石油取引に関連しているとして、米国は昨年制裁対象とした。

あえて試みず

  ブルームバーグが中東・アジアの各地で取材した船主の大半は、ペルシャ湾を出るには現在、イランと米国の両方の承認を得る必要があるが、封鎖措置の具体的な仕組みが明らかになるまでは、あえて海峡通過を試みることはないと説明した。

  トランプ氏の封鎖措置は、中東のエネルギーや燃料に大きく依存するアジア諸国に警戒感を引き起こしている。中国政府が13日発表した声明によると、同国の王毅外相は全世界の利害関係者に米国とイランの和平交渉を支持するよう呼び掛けた。

  中国外務省の郭嘉昆報道官は14日の定例記者会見で、Rich Starryの航行に関する詳細は把握していないと発言。「戦争を終わらせ、ペルシャ湾地域の平和と安定を実現することによってのみ、ホルムズ海峡の安全で障害のない通航を根本的に守ることができる」と語った。

  米国が中国船の通航を阻止すれば、市場は動揺し、地合いはいっそう悪化しそうだ。

  ユニオンバンケールプリヴェ(UBP)のアジア担当シニアエコノミスト、カルロス・カサノバ氏(香港在勤)は「トランプ氏の発表は良くて張り子の虎、悪ければ、事態のエスカレートを意味する」と述べた。

  Rich Starryはマラウイ船籍で航行していると示しているが、アフリカの内陸国であるマラウイは、公式に登録された外洋船はないとしている。

 Rich Starryの船主はフル・スター・シッピングという企業で、海運データベースのエクアシスによれば、米国務省の制裁対象になっている上海軒潤船務と連絡先が同じだ。上海軒潤への電話はつながらず、電子メールでのコメント要請にも回答はなかった。

  Elpisはチャートケミカルという企業が保有しており、その管理会社であるマレーシア企業IMSの連絡先を使用している。IMSへの電話はつながらず、同社は電子メールでのコメント要請にも応じていない。

US, Iran Weigh New Talks as Tanker Crosses Hormuz2:30動画:「Rich Starry」の動向に関するブルームバーグテレビジョンの報道

原題:Ship Testing Hormuz Blockade Appears to Transit Then U-Turn (1)US-Sanctioned Tanker Tests Trump Blockade With Hormuz Exit (2)US Says Six Ships U-Turned in First Day of Hormuz Blockade (3)(抜粋)