- ナスダック100も最高値、AIや企業収益への楽観広がる-国債は反落
- 前日急落の原油は一進一退、円は片山氏の発言後に上昇する場面も

15日の米金融市場では、S&P500種株価指数が1月下旬以来初めて最高値を更新した。米国とイランの和平合意に向けた期待に加え、決算シーズンが好調な滑り出しとなっており、楽観的な見方が強まった。前日急落していた原油相場は一進一退の展開となり、米国債は反落。円はリスク選好が高まる中、ドルに対して1ドル=159円前後に下落した。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 7022.95 | 55.57 | 0.80% |
| ダウ工業株30種平均 | 48463.72 | -72.27 | -0.15% |
| ナスダック総合指数 | 24016.02 | 376.94 | 1.59% |
S&P500種は0.8%上昇し7000台に乗せた。株式トレーディング収入が予想を上回ったバンク・オブ・アメリカ(BofA)とモルガン・スタンレーが買われた。2019年以来の長期連続高となっているナスダック100指数は1.4%上昇し、昨年10月以来の最高値更新となった。

関係者によると、米国とイランは、22日に期限が切れる停戦について2週間の延長を検討している。和平合意に向けた交渉の時間をさらに確保する狙いだという。双方の仲介国は、最大の争点となっている問題を解決するための実務者協議を設定しようとしている。
和平合意が実現するとの期待から、2月下旬の戦争開始以降に織り込まれてきたリスクプレミアムが解消されつつあり、市場の焦点は再び人工知能(AI)や米企業収益の底堅さに移っている。
TSロンバードのチーフ米国エコノミスト、スティーブン・ブリッツ氏は「痛みの不在が足元の株式相場上昇の引き金となっており、テクニカル面も一段高を後押ししている」と指摘。その上で、戦争の影響がより明確になれば「見通しを改めて評価し直す必要があるだろう」と述べた。

この日の上昇は、株式市場が大きな転換点を迎えたことを示す。先月末まで続いた売りにより、S&P500種はピークから9%余り下落していた。ナスダック100もイラン戦争の影響で12%下落し、調整局面に入っていた。戦争に伴う原油価格の高騰により、1970年代型のスタグフレーションへの懸念が強まっていたことが背景にある。
だが、中東情勢の緊張緩和の兆しに加え、AIや企業収益への楽観が広がる中、懐疑的だった投資家も慎重姿勢を崩しつつある。
ミラー・タバクのチーフ市場ストラテジスト、マット・メイリー氏は「投資家にとっては乗り遅れることへの恐怖(FOMO)を避けるのは難しい」と指摘。「ここ数年うまく機能してきた押し目買いの戦略をさらに後押ししている」と述べた。
ベレンベルクのチーフエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は「不確実性が続く中でも、戦争後を見据えた先行きに焦点を再び当てるのは妥当だ」と指摘。「市場を動かしている主な材料は、戦争に関連した流動性確保を急ぐ動きが一巡し、一部で反転しつつあることだ。これがリスク資産を支えている」と述べた。
決算シーズンが本格化する中、イラン戦争が企業の収益見通しに打撃を与えているかどうかや、不確実性の高まりを受けて企業や消費者が支出を抑制しているかどうかに注目が集まっている。
UBSチーフ・インベストメント・オフィスの米州最高投資責任者(CIO)兼グローバル株式責任者、ウルリケ・ホフマン・ブチャディ氏は「企業利益の堅調な拡大と良好なマクロ経済環境を背景に、S&P500種は年内に上値を伸ばす余地があるとの予想を維持している」と述べた。
米国債
米国債相場は反落。前日急落していた原油価格がこの日は小動きとなり、買いが途絶えた。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.89% | 3.1 | 0.65% |
| 米10年債利回り | 4.28% | 3.2 | 0.74% |
| 米2年債利回り | 3.76% | 1.2 | 0.33% |
| 米東部時間 | 16時46分 |
2月末のイラン戦争開始以降、原油価格は約30%上昇しており、これが米国債利回りを動かす主要因となっている。原油高に伴うガソリンの値上がりがインフレ指標を押し上げ、年内の米利下げ観測が後退した。
ウェルズ・ファーゴの金利ストラテジスト、アンジェロ・マノラトス氏は、債券相場の上昇が失速していることについて「全体的な慎重姿勢を反映したものだ」と指摘。「エネルギー価格やインフレ指標の急上昇を踏まえると、2月下旬の水準に戻るにはハードルが高い」と述べた。

米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数は昨年、2.9%上昇した。他のインフレ指標は、4月30日に発表される3月のPCE価格指数が加速する可能性を示している。ここ1週間に発表された3月の消費者物価指数(CPI)と米生産者物価指数(PPI)を踏まえ、モルガン・スタンレーはPCE価格指数の伸びが3.42%に加速すると予想。バークレイズは3.5%を見込んでいる。
米クリーブランド連銀のハマック総裁はCNBCのインタビューで「しばらくの間据え置くというのが私の基本シナリオだが、金利には上下両方向のリスクがある」と発言。「データ次第で、より緩和的にする必要もあれば、より引き締め的にする必要もあるかもしれない」と語った。
FRBが午後に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、 米国の経済活動は大半の地域で小幅から緩慢なペースで拡大を続けた。対イラン戦争で新たな不確実性とエネルギーコストの上昇が生じたという。
金利先物市場は、年内に0.25ポイントの利下げが実施される確率を約3分の1と予想。2027年9月までには1回の利下げを完全に織り込んでいる。原油価格が急騰する前は、年内に0.25ポイント利下げ2回が完全に織り込まれていた。
為替
ニューヨーク外国為替市場で、ドルが小動き。この日は米国とイランが停戦の延長や長期的な和平合意に向けた協議再開に近づいているとの楽観的な見方から、株式などリスク資産への買い意欲が高まった。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1192.39 | -0.88 | -0.07% |
| ドル/円 | ¥158.97 | ¥0.18 | 0.11% |
| ユーロ/ドル | $1.1798 | $0.0002 | 0.02% |
| 米東部時間 | 16時46分 |
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は小幅に下げ、8営業日続落。3月31日には4カ月ぶりの高値をつけたが、足元ではイラン戦争開始直後に当たる3月初旬の水準まで押し戻されている。
ドルが長期連続安となっているのは、イラン戦争が前向きな結末を迎えるとの市場の期待を反映している。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)はこうした織り込みについて「極めて楽観的だ」と指摘した。
MUFGのEMEAグローバル市場調査責任者、デレク・ハルペニー氏は「今週は、戦争開始後に最も明白な戦略であったドルロングを投資家が見切り始めた局面のようだ」とリポートで分析。さらに「ドルは戦争開始後、想定ほど上昇しておらず、ここにきて売り圧力の高まりを示す兆候が増えていることは、戦争開始前からのファンダメンタルズの弱さを反映している」と述べた。
主要10通貨の大半は値上がりしたが、リスク選好の高まりを背景に、安全資産とされる円はアンダーパフォームした。
円はドルに対して一時上昇に転じ、158円70銭台を付ける場面があった。ワシントンを訪問している片山さつき財務相は、ベッセント米財務長官との会談後、為替の議論を行ったと説明。「必要ならば断固たる措置も取る」と述べ、改めて介入も辞さない姿勢を示した。
その後は再び下げ、159円前後で推移した。

原油
原油先物相場はもみ合い。米国の在庫急減と、米国とイランによる和平交渉の行方の両方が意識された。
WTI原油は早い時間帯の取引では買いが優勢となっていた。米エネルギー情報局(EIA)の統計で、原油と主要石油製品の在庫がいずれも減少したことが材料視された。中東における供給混乱を補うため、世界は米国からの供給に頼っている。EIAによると、輸出需要の高まりを受け、原油と燃料の輸出量は過去最高に達した。
戦争の行方を巡るホワイトハウスの姿勢がぶれていることもあり、投資家は判断に迷っている。
ベッセント米財務長官はこの日、ロシア産およびイラン産の一部原油に対する制裁免除措置は更新しない方針をを改めて確認した。

フォレックス・ドット・コムのファワド・ラザクザダ氏は「ドルと原油にはやや持ち直しの動きも見られたが、市場は依然として前向きな結果を強く織り込みつつあるようだ」と指摘。その上で「円滑な解決を織り込むには、やや時期尚早に感じられる」と語った。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は、前日比ほぼ横ばいの1バレル=91.29ドルで取引を終了。北海ブレント先物6月限は14セント高の94.93ドルで引けた。
金
金相場は反落。外交交渉によるイラン戦争の終結が慎重ながらも織り込まれ、売りが優勢になった。
ペッパーストーン・グループのストラテジスト、ディリン・ウー氏は「市場は、紛争緩和への期待と依然として解消されていないインフレ圧力の間で揺れている」と指摘。米金融当局が高水準にある政策金利を長期にわたり維持する姿勢は変わっていないとも述べ、「利回りを生まない金には、上値に自ずと限界がある」と語った。
スポット価格はニューヨーク時間午後2時20分現在、前日比45.82ドル(0.95%)安の1オンス=4795.93ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は、同26.50ドル(0.55%)安の4823.60ドルで引けた。
原題:US Stocks Close at Record Highs on Peace Hopes: Markets Wrap(抜粋)
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