- 売却に向けて5月中旬に第1次入札、不動産関連取引で国内最大案件に
- 外資系ファンドや大手不動産、総合商社など20社超が購入に意欲示す

週末や休日に家族連れでにぎわう千葉県の鴨川シーワールド。人気は海の王者シャチが大ジャンプを繰り返し、プールを囲むスタンドの観客に水を浴びせるパフォーマンスだ。この水族館を含め、全国に多様な物件を持つサンケイビル(東京都千代田区)の売却に向けた手続きが始まった。
事情に詳しい複数の関係者によると、フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)は完全子会社で複数のオフィスビルやホテル、物流施設などを所有するサンケイビルの全株式を手放す方針だ。その価値は最大8000億円規模が見込まれ、国内の不動産関連の合併・買収(M&A)案件としては過去最大となる可能性もある。
非公開情報のため匿名を条件に語った関係者によると、フジHDはフィナンシャルアドバイザーに大和証券とみずほ証券を起用し、1次入札を5月中に行う予定だ。外資系不動産ファンドや大手デベロッパー、総合商社など20社以上が関心を示しているという。
サンケイビルの売却について、三井住友トラスト基礎研究所の大谷咲太投資調査部長は、今年最大の取引金額になりそうだとして、「不動産業界では最大の関心事」と指摘した。
フジHDの広報担当者は取材に対し、「弊社が発表したものではなく、報道の内容についてはコメントすることはありません」と回答した。大和証とみずほ証の担当者はコメントを控えるとしている。
フジHDは元タレントが起こした女性との性的トラブルをきっかけに、物言う株主(アクティビスト)などからの外圧が高まった。著名アクティビストの村上世彰氏の娘である野村絢氏を含む、株主からの不動産事業の分離要求を受け入れる形で、今年2月から同事業に外部資本を導入する検討を始めていた。
サンケイビルは子会社なども通じ、オフィスビル、ホテル、分譲マンション、賃貸マンション、物流施設、介護施設、水族館、ゴルフ場など不動産と密接に関連した事業を展開している。オフィスビルでは東京・大手町にある31階建ての「東京サンケイビル」や、大阪の中心地にある「ブリーゼタワー」などを所有する。
広がる売却の動き
このところ、企業が抱えていた不動産子会社や保有物件を売却する動きが広がっている。アクティビストなどから本業と関係の薄い事業や保有不動産の売却を迫られていることが共通点だ。

ビール大手のサッポロホールディングスは昨年12月、恵比寿ガーデンプレイスなどを保有・運営するサッポロ不動産開発を4770億円で投資ファンドに売却すると発表した。IT企業の富士ソフトは投資ファンドに買収されて非公開化した後、横浜市の桜木町駅前にある本社ビルなどを686億円で売却した。
みずほ信託銀行によると、上場企業が適時開示したケースで、資産の効率的な活用を理由にした大型不動産売却は24年の1件から、25年は13件と急増した。
東京証券取引所が企業に資本効率を意識した経営を求めていることもあり、経営資源を本業に集中すべきだなどの理由で、不動産の売却を迫る外部からの圧力はますます強まっている。同じような事情を抱える企業にとって無視できない状況となっている。
インフレの浸透を背景に上昇傾向が続く不動産価格も買い手側の意欲を高める要因となっており、売り手、買い手双方のニーズは強い状況が続きそうだ。みずほ信託の笹田賢一社長は、「26年度以降もこの流れは続くだろう」との見方を示した。
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