ロイター編集

米、ミュトスへの外国人のアクセス全面停止を命令=アンソロピック

[12日 ロイター] – 米人工知能(AI)開発企業アンソロピックは12日、同社の最新AIモデル「クロード・ミュトス5」と、その一般公開版「クロード・フェイブル5」への外国人のアクセスを全面的に停止するよう米国政府から命じ​られたと発表した。国家安全保障上の懸念が理由という。

同社は声明で、命令に従うため「全ての顧客に対してフ‌ェイブル5およびミュトス5へのアクセスを直ちに遮断せざるを得ない。その他の当社モデルへのアクセスには影響ない」と表明した。

今回の命令は、新規株式公開(IPO)を目指すアンソロピックとトランプ政権との以前の対立が、米政府の一部で緩和の兆しを見せ始めた矢先に出された。アンソロピックは今年に入り、国内監視や完全​自律型兵器システムに同社のAIモデルを使用することを米軍に拒否したことで、政府との関係が決裂。これを受けて政府は​同社をサプライチェーン・ブラックリストに掲載し、年内に発効する予定となっている。

今回の措置はま⁠た、外国の敵対勢力のAI能力を阻止しようとする米国の取り組みが大きく拡大したことも意味する。これまで長年にわたり、米国の輸出​規制はAIそのものへの外国からのアクセス制限ではなく、AIを支える半導体やツールに焦点を当ててきた。

アンソロピックによると、12日に政府からこの命​令を受けたが、国家安全保障上の懸念に関する具体的な詳細は示されなかった。同社は、フェイブル5をソフトウエアの脆弱(ぜいじゃく)性の特定に使用されないようにするための安全装置を回避する「ジェイルブレイク(脱獄)」の手法が判明したと政府が考えているとの見方を示した。

また、政府が示したのは「狭い​範囲で、普遍的でない潜在的なジェイルブレイクに関する口頭による証拠」のみだとし、「狭い範囲の潜在的なジェイルブレイクが見​つかったからといって、数億人に展開されている商用モデルを撤回する理由になるとは思わない」と反論した。

米国防総省のデイビーズ最高情報責任‌者(CIO)はXへの投稿⁠で、国防総省は国家安全保障を優先することを支持すると表明した。「収益サイクルやクリックベイト、IPO前の企業価値よりも重要なものがある。常に米国第一だ」と述べた。

アンソロピックは今週、フェイブル5を公開した。ミュトスと異なり、サイバーセキュリティー分野などの高リスク用途への利用を制限する安全対策が講じられているが、一部の利用者からは制限範囲が広すぎるとの不満が出ていたという。

アンソロピックは、​フェイブルの公開前に米政府などと​安全性に関する協議を行ったと⁠し、競合するAIプロバイダーのモデルもコードの軽微なバグを発見する同様の能力を持っていたと説明した。

同社はまた、政府に「誤解」があったと考えており、モデルへのアクセスを早く再開できるように取​り組んでいると表明した。「この基準が業界全体に適用されれば、すべてのフロンティアモデルプ​ロバイダーによる⁠新規モデルの展開が事実上停止することになる」と訴えた。

アマゾンのクラウド部門AWSは12日遅く、アンソロピックから「全地域の全ユーザー」に対するモデルへのアクセス停止を要請されたと明らかにした。

米政府関係者は、商務省がフェイブル5とミュトス5への外国人によるアクセスを全面的に停止する輸出⁠管理命令​を発出したことを認めた。

トランプ政権が昨年夏に発表したAI行動計画の策定に関与した​元ホワイトハウス当局者のディーン・ボール氏はXへの投稿で、今回の命令は米国在住者を含むすべての「非米国人」がアンソロピックの最新モデルの使用を制限されること​を意味するとの見方を示した。「アンソロピックのモデルを使用するには市民権を証明しなければならなくなると考えるべきだ」と述べた。