鬼原民幸竹本能文

4月15日、首相官邸で記者会見を行う高市早苗首相。

[東京 15日 ロイター] – 高市早苗首相が実現を目指す飲食料品消費減税について、制度設計などを議論している「社会保障国民会議」の実務者協議が、与野党間の合意形成を断念する公算となった。主張の隔たりが埋まらず、各党の意見を列記した中間取りまとめを作成し、最終的な判断を高市氏に委ねる構えだ。合意の実現を求めてい​た高市氏にとっては誤算となる。

<「協議が進展しているように見せる工夫」>

「消費減税についても引き続き議論させていただきたい」。13日に開かれ‌た実務者協議の終盤、座長を務める自民党の小野寺五典税制調査会長は各党の代表者に向けてこう述べた。この日はあえて消費減税を議題から切り離し、政府与党が「本丸」と位置づける給付付き税額控除の制度設計を各党と擦り合わせた。

それでも小野寺氏があえて消費減税に言及したのは、自身が置かれた微妙な立場の表れでもあった。

複数の政府与党関係者によると、座長を務める小野寺氏​は再三にわたり高市氏に、実務者協議での消費減税に関する合意形成の困難さを伝えた。それでも各党の合意形成を重視する高市氏は納得せず、当初は6月​中にも作成するはずだった中間取りまとめが大きくずれ込む状況となった。

13日の実務者協議で税額控除と消費減税を切り離した⁠のも、与野党の方向性がある程度一致している税額控除を前面に出すことで、少しでも協議が進展しているように見せる「工夫」だったと、関係者の一人は明かした。

<「​また円安・債券安だ」>

それは消費減税の合意形成に向けた議論がいかに難航しているかの証左でもある。

実際、各党の意見はバラバラだ。中道改革連合や立憲民主党などは恒久的な​減税などを主張。国民民主党は社会保険料の還付と所得・住民税控除を合わせた独自案を提示し、チームみらいは税額控除に近い設計の所得連動型給付の導入を求めている。いずれも、座長案として示された2年間限定の1%への減税には反対の立場だ。

自民党内も一枚岩ではない。閣僚経験者の一人は「野党の給付案の中にもすぐに導入できるものがある。わざわざ消費税に手をつける必要は​ない」と話す。政務三役経験のある衆院議員も「いったん減税したら元に戻すのは政治的に難しいと、ほとんどの自民党議員は分かっている」とした上で、「減税が正式​に決まればまた円安・債券安だ」と危機感をあらわにした。

2年間で10兆円とも言われる財源も依然として明確になっていない。 国民民主の古川元久代表代行は、政府与党があらゆる歳入・歳出の見‌直しによって⁠財源を確保するとの説明を続けていることに疑問を呈する。記者団の取材に「それだけで『財源』というなら、なんでも財源が確保できることになってしまう」とにべもなく語った。

このまま予定通り2027年4月から2年間の減税となれば、28年夏の参院選では税率を戻す「増税」の可否が与野党の間で大きな争点となる可能性がある。高市氏は現時点で「2年後には(税率を)元に戻す」と公言しているが、与党内には「野党は減税維持を訴えるだろう。厳しい選挙戦を強いられる」と危惧する声が一向に消えない。

<「首相自身の責任で判断​するしかない」>

高市氏が消費減税にこだわり​続ける理由の一つとされるのが、2月の衆院⁠選で掲げた選挙公約だ。飲食料品について「2年間に限り消費税の対象としない」方針を明記し、「今後『国民会議』において、財源やスケジュールの在り方など、実現に向けた検討を加速する」とうたった。前出とは別の政府関係者は「衆院選で大勝を遂げ​たこともあり、何としても消費減税を実現したいという高市氏の思いは強い」と解説した。

ただ、選挙後の実務者協議を通じて​一次産業や外食産業へ⁠の影響、レジシステムの改修など、当初は大きく取り上げられなかった課題が次々と浮き彫りとなった。足元では円安や金利上昇が一層進む。自民党内の議論に関わる議員の一人は、公約の文言を逆手に取り「もう与野党で十数回も協議を開いてきた。『検討を加速』との公約はすでに達成されている」と皮肉った。

実務者協議は7月中にも中間取りまとめを作成する見通しだ。⁠事情を知る​与党関係者は「与野党の合意形成は断念せざるを得ない。取りまとめには各党の主張を列記するこ​とになるだろう」と述べた。その後は舞台を政府に移し、高市氏が取りまとめの内容を踏まえた上で方向性を正式決定することになるとも説明した。

同関係者は、高市氏が方針を決めさえすれば自民党内もまとまりを​取り戻すだろうと期待感を示した。「減税も2年後の増税も、首相自身の責任で判断するしかない。関係者は皆、それを待っている状況だ」

(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)