EUの報復関税は共和党の支持基盤などを標的にする

トランプ氏、ツイッターに「全自動車に20%の関税」

 【ロンドン三沢耕平、ワシントン清水憲司】欧州連合(EU)は22日、米国による鉄鋼・アルミニウムの輸入制限への対抗措置として、総額28億ユーロ(約3600億円)規模の米製品に最大25%の追加関税を課す報復措置を発動した。これに対して、トランプ米大統領は同日、EUが関税や貿易障壁を直ちに取り除かなければ「EUから米国に輸出されるすべての自動車に20%の関税をかける」とツイッターに投稿、再報復に出る構えを表明した。

 米中に加え、戦後の自由貿易体制を主導してきた米欧が報復の応酬による「貿易戦争」に突入すれば、世界経済への打撃は甚大となる。

 米国は3月、米通商拡大法232条に基づき、鉄鋼に25%、アルミに10%の追加関税を課す輸入制限を発動。当初、EUは適用除外としていたが、今月1日に発動を決めた。

EUは米国の措置が世界貿易機関(WTO)の協定に違反すると判断。輸入制限の損害額を64億ユーロ(約8100億円)と想定し、米製品に同規模の追加関税をかけることで損害を相殺する方針だ。

 EUの執行機関である欧州委員会は22日、対抗措置の手始めとして、28億ユーロ規模の米製品に対して、報復関税を課すことにした。今後はWTOの紛争解決手続きで米国の違反が明らかになり次第、残る36億ユーロ規模の報復関税に踏み切る構えだ。

 EUがWTOに提出したリストによると、報復関税の対象には鉄鋼・アルミ製品のほか、トウモロコシやオレンジジュース、ハーレーダビッドソンのオートバイ、バーボンウイスキーなど、米共和党の有力議員の地元産品がズラリと並ぶ。米政界で発言力の強い有力議員の地元を狙い撃ちすることで、トランプ政権がこれ以上、保護主義的な措置に走らないように揺さぶりをかける思惑がうかがえる。EUは「貿易戦争」をエスカレートさせたくないのが本音で、米国が輸入制限を撤回すれば、EUも撤回する方針だ。

 実際、米国内でも産業界を中心に「貿易戦争」が米経済に大きな打撃を及ぼすことへの懸念が高まっている。ただ、11月の米議会中間選挙に向けた支持者固めなども背景にトランプ氏は強硬姿勢を崩しておらず、米欧の報復合戦に歯止めが掛からなくなることが懸念される。