海上自衛隊のP1哨戒機に韓国駆逐艦が火器管制レーダーを照射した問題では、日本海上での緊迫した当時の状況が徐々に判明しつつある。

 しかし、抗議する防衛省と、照射していないとする韓国側の主張は平行線のままだ。

 P1は照射された電波を収集・記録しており、同省幹部は「困るのは韓国側になる」と証拠に自信を示す。ただ、証拠にはP1の監視能力に関わる情報が含まれており、全て公表するわけにはいかない事情もある。

 厚木航空基地(神奈川県)を離陸した海自P1が、石川県・能登半島沖で火器管制レーダーの照射を受けたのは20日午後3時ごろ。射撃目標としてレーダーに追尾される「ロックオン」状態を機体のセンサーが感知した。

 防衛省によると、問題の韓国駆逐艦には2基の火器管制レーダーが艦上の前後にあり、P1の乗員は後部のレーダーの方位盤が動作していることを目視でも確認した。

 P1側は無線で駆逐艦に対し、「韓国海軍艦艇 艦番号971」と3回英語で呼び掛けたが、応答はなかった。韓国側は、認知したのは「『コリア コースト』という言葉だけであった」とするが、岩屋毅防衛相は「(P1が)そのような用語を用いた事実はない」と否定した。

 当時、P1は日本の排他的経済水域(EEZ)を警戒監視中で、韓国駆逐艦の周辺を撮影していた。韓国側は、P1が駆逐艦の上空を低空飛行する特異な行動を取ったと主張したが、防衛省は「駆逐艦から一定の高度と距離を取っており、低空で飛行した事実はない」と反論。自衛隊幹部も「対空火器を持つ他国の艦船を撮影する際に、真上を飛行することはあり得ない」と強調する。

 韓国側は、火器管制レーダーとセットになっている光学カメラを作動させた際、レーダーのアンテナが動くようになっているとも説明。光学カメラは、レーダーが目標物を見失った場合に備え、映像で対象を追尾する装置だが、「カメラを回して日本の哨戒機を監視する過程で、一切の電波放射はなかった」との立場を崩していない。

 政府関係者は「P1は火器管制レーダーが発した電磁波の周波数帯を記録した。動画を含め、順次公表すれば韓国側は窮地に追い込まれるが、P1の情報収集能力が知られることにもなる」と指摘。「日米韓の防衛協力は重要で、問題を長期化させることは北朝鮮を利するだけだ」と話した。