日露外相会談に臨む河野氏(左)とラブロフ氏=2019年1月14日、AP

 【モスクワ光田宗義、大前仁】河野太郎外相は14日午前(日本時間同日夕)、日露平和条約締結に向けた交渉のため、ロシアのラブロフ外相とモスクワで会談した。会談は安倍晋三首相とプーチン露大統領が両外相を「交渉責任者」に指名した昨年12月以来初めて。今月22日にモスクワで日露首脳会談、2月にドイツでの国際会議に合わせて外相会談を開き、交渉を進めることで合意した。ただ、北方領土を巡る歴史認識などで、双方が主張を述べ合うにとどまったとみられる。

 会談は約2時間半にわたり、その後、両外相はワーキングランチを約1時間10分行った。河野氏は会談後、記者団に「日露双方の具体的な考え方を議論した。長年未解決の困難な問題だが、終止符を打つという両首脳の決意を踏まえた会談だった」と振り返った。

 これに対し、ラブロフ氏は会談後に開いた記者会見で「我々の間には大きな不一致があることは隠せない」と指摘。会談では「最初の一歩は南クリル諸島(北方領土)におけるロシアの主権を含めて、日本が全面的に第二次大戦の結果を認めることだ」との点を伝えたという。さらに、日本側が「北方領土」という呼称を使うことについても「ロシアとしては受け入れられない」と突き放した。

 河野外相は会談後、「我々は領土問題を含め、日本側の考え方を明確に伝えた。ロシア側も考え方を具体的に伝え、真剣かつ率直なやり取りだった」と語ったが、日本側の主張の詳細は明らかにしなかった。日本側としてはロシアと歴史問題で真っ向から衝突する事態を避けるため、交渉外での発信を控える狙いもあるとみられる。

 一方、ラブロフ氏は日本が進める陸上配備型迎撃ミサイルシステムのイージス・アショアを念頭に「米国が日本の領土で世界規模のミサイル防衛システムを開発している点を指摘した」と問題視したことも明らかにした。

 安倍首相とプーチン氏は昨年11月、「日ソ共同宣言(1956年)を基礎に交渉を加速させる」ことで合意。共同宣言は「平和条約締結の後、歯舞群島と色丹島を日本に引き渡す」と規定している。12月の首脳会談では、両外相を「交渉責任者」、森健良外務審議官とモルグロフ外務次官を実務を担う「特別代表」とする新たな枠組みを設置した。両氏は15日に次官級協議を行う予定。

 日本政府は歯舞、色丹の2島返還と国後、択捉両島での共同経済活動を組み合わせた「2島返還プラスアルファ」での決着を探る構えだ。ただし、ロシア側は2島返還後、北方領土に在日米軍基地が置かれかねないとの懸念を示しており、条約や協定など「文書」による担保を求める方向だ。歴史認識を巡っても、「北方領土は日本固有の領土」とする日本の立場を改めるよう求めており、日本側は難しい交渉を余儀なくされそうだ。