26日、米フロリダ州マイアミで開かれた大統領選に向けた民主党の候補者討論会に臨むウォーレン上院議員(AFP時事)

 【マイアミ(米)時事】来年秋の米大統領選に向けた民主党の初の候補者討論会が26日(日本時間27日)、フロリダ州マイアミで2日間の日程で始まった。支持率で上位2人を追い上げるウォーレン上院議員は、全国民に公的医療保険を拡充する急進的な政策をアピール。他の候補も移民問題などで存在感を示そうと躍起になった。

 「『不可能だ』と言う政治家は単に戦おうとしていない。公的医療という基礎的な人間の権利のために私は戦う」
 ウォーレン氏がひときわ喝采を浴びたのは、同氏が主張するメディケア・フォー・オール(国民皆保険)の実現性に他の候補者が疑問を呈した場面だった。

26日、米フロリダ州マイアミで開かれた大統領選に向けた民主党の候補者討論会(AFP時事)

 ウォーレン氏やサンダース上院議員が提唱する国民皆保険は、民間保険を廃止して全て公的保険に吸収する急進的な案。討論会では、ブッカー上院議員も賛意を示し、「保険会社や製薬会社は米国人の痛みを食い物にしている。(公的医療は)米国人の権利であるべきだ」と訴えた。

 公的保険が高齢者や貧困層に限られる米国では、1人当たりの医療費が日本の倍以上の1万ドル(約108万円)に上り、無保険の国民も1割を超えて深刻化している。討論会を見に来た23歳の女子学生は「大学院に行くつもりだが授業料が高く、保険に入る余裕がない」と窮状を明かした。

 ただ、全て公的保険で賄うには、政府の年間歳入に匹敵する3兆ドル(約320兆円)の財源が必要との試算もある。討論会では、穏健派のクロブシャー上院議員が「多くの人は会社を通じて加入する民間保険に満足している」と慎重な考えを示したものの、財源の問題をめぐって議論は深まらなかった。

 この日、ウォーレン氏と並ぶ討論の「勝者」(米メディア)と評価されたのが、オバマ政権で住宅都市開発長官を務めたカストロ氏だ。支持率1%以下の同氏は、不法移民の収監を認める法律の廃止を主張。オルーク元下院議員に向かって、「ここにいる何人かの候補者は廃止を訴えてきたが、オルーク氏は違う。私はそんな候補者と戦う」と挑発し、見せ場をつくった。