片山さつき財務相とベセント米財務長官が昨日、日米協調による円買い介入に関する声明・談話を公表した。両財務大臣とも「さらなる協調介入も躊躇せず」と宣言しており、円売り主導の投機筋に対して強烈な警告を発した。今回の協調介入が円安の転機になるかどうかは、今後の市場の推移にかかっている。
今回の協調介入のメリットは何か。日本側には大きなメリットがあるように見える。投機筋と呼ばれる円安主導派との戦いは、日本単独では限界があることは誰もが認めていることでもある。ここに米国が参加することで、円安という既定路線にブレーキをかけることが可能になる。これによって円安が一息つけば、高市政権にとってのメリットは計り知れない。「責任ある積極財政」にとっても追い風になる。
それは理解できるのだが、米国にとってのメリットは何なのだろうか。これがよくわからない。片山財務大臣は昨日の記者会見で記者団から、「米国のメリットは何ですか」との質問を受けている。これに対する答えは「それは米側に聞いてください」とそっけなかった。ネットの中継を見ながら、「米側のメリットについて大臣はどう考えていますか」と、質問の仕方をもう少し工夫すれば良かったのにと考えたりした。
それはともかく、ベセント財務長官はSNSのXに次のように投稿している。
①無秩序な動きへの対応
②日米の緊密な連携に基づく対応
③今後も躊躇なく介入する
④日本に対する支援
⑤セーフティネットの拡充
日米で共通するのは「無秩序」や「投機筋」といった言葉である。
トランプ大統領は今回の協調介入について「友好の証」と述べている。いかにもトランプ氏らしい情緒的な発言だ。日米が友好関係にあることは事実だとしても、米国が情緒で政策を選択する可能性は皆無に近い。とすれば、協調介入に現実的なメリットがあるということだ。それは何か。
1つは、米国債の利回り上昇を回避することだろう。インフレ含みの米債券市場では、10年国債の利回りが少しずつ上昇している。就任したばかりのウォッシュFRB議長も政策金利の引き上げに傾いていると見られている。
円安が進めば、日本の国債が売られて利回りが上昇する。それが米国に飛び火するのを避けたかったのではないか。協調介入は米国にとってもメリットがある。FIMAレポ・ファシリティの拡充強化はその一環だろう。
でも、それだけで「躊躇なき協調介入」に踏み切れるのか。おそらくもっと奥深い“本筋”の理由があるような気がする。片山財務大臣は昨日の会見で、「ベセント財務長官とは10回近く、さまざまな場面を捉えて議論を重ねてきた」と説明している。議題も通貨政策に限らず「さまざまな問題を話し合った」としている。その結果の協調介入だとすれば、円安の転機につながる可能性があるのかもしれない。
三村淳財務官は「日米通貨同盟の完成形」と表現している。これも意味深な発言だ。通貨同盟はこれまで絶えず米国主導で推進されてきた。「完成形」という以上、この同盟の前提条件は対等でなければならない。これまでの日米関係は、米国の核の傘のもとで日本が米国に追随することで成り立ってきた。「完成形」とは何を意味するのだろうか。
高市早苗首相は「責任ある積極財政」について、成長投資と安全保障投資の劇的な拡大を主張している。2040年までに370兆円の国内投資を見込み、安全保障投資の中には防衛装備品の移転(武器輸出)なども含まれている。片山財務大臣はベセント長官に対して、高市内閣の経済政策についてもかなり細かく説明しているはずだ。
そんなことを考えながらロイターの記事を見た。3日に配信された「米財務長官、円協調介入の再実施辞さず FRB支援策の拡充促す」とタイトルのついたこの記事は、最後を次のように締めくくっている。
「ベセント氏はまた、高市早苗首相率いる日本の政権を称賛し、『15年近くにわたる強力な刺激策が持続的で強固な経済の基盤を生み出しており、アベノミクスはエキサイティングな新しい段階に入ろうとしている』」と。ただ、アベノミクスは誤解を受けやすい。これを「サナエノミクス」に置き換えれば、ベセント氏の言わんとすることはより理解しやすくなるだろう。
片山氏は「経済成長のボタンを押して、押して、押して、そして押しまくる高市政権の政策が高く評価されている」と記者団に解説している。今回の協調介入にはいろいろな側面がありそうだ。個人的には期待感と警戒感が半々といったところだ。