• サイオン率いるバーリ氏、経営陣に企業価値を高めるよう促している
  • 自社株買い、配当、利益押し上げる買収の具体例が見たい-バーリ氏

ヘッジファンド投資家のマイケル・バーリ氏は、指数連動型商品や上場投資信託(ETF)に資金が流入しバブルの様相を呈している中、極度に過小評価されている日本の中小型株が素晴らしい投資機会をもたらしているとの認識を明らかにした。

米サブプライム住宅ローンの破綻を予測し、その手法がマイケル・ルイス氏の著書「世紀の空売り」(原題:ザ・ビッグ・ショート)でも取り上げられたバーリ氏は今、株式投資の「銘柄選択に100%フォーカスしている」と述べた。同氏は最近、米国と韓国の小型のバリュー株に投資していることも明かしていた。

約3億4300万ドル(約363億円)規模の資産を運用するサイオン・アセット・マネジメントを率いる同氏は、すでに日本企業8社の株式を保有し、経営陣に企業価値を高めるよう促しているという。

バーリ氏はブルームバーグ・ニュースの電子メールによる取材に対し「多くの場合、企業は多額の現金や株式を保有し、それが株価を構成する主因となっている」と指摘。「その企業が事業成長のための投資、自社株買い、配当金支払い、または利益を押し上げる買収を行っている具体例を見たい」とコメントした。

バーリ氏およびサイオンが株式を保有する日本企業は以下の通り:

  • トーセイ:マンション建設・販売やオフィスビル賃貸を手掛ける。バーリ氏は株価収益率が約7倍で割安なほか、機を捉えて自社株買いを実施、資本配分を含め全事業でよく機能しているとし、多めに保有している銘柄の一つと説明
  • カナモト:建設用機械・機器のレンタルを手掛ける。「クレジットの観点から見てしっかりとした運営がなされている」とバーリ氏。「機器や企業全体の取得にも目を向けており、日本には多くの再編余地がある」と分析
  • アルプス技研:さまざまな業界向けに技術者・人材の派遣事業を運営。「農業や介護分野に事業を拡大する中で、最近の移民法改正の恩恵を受ける」とバーリ氏は予想。2014年以降、1株当たり利益は2倍余りに増加。売上高は50%増えていると説明
  • 日本ピラー工業:メカニカルシールやガスケット、グランドパッキンなど、さまざまな産業機械の液体漏れを止める製品を提供。「在庫を一掃し、成長が再開する中、セクターでも高ベータ銘柄」だとして、株価反発を見込む
  • 村上開明堂:自動車用ミラーなどを製造。同社は事業の成長見通しを示し、自社株買いや配当を実施しているが、それだけでは十分でないとバーリ氏は指摘。株価は年初来で1.5%安。18年は35%下落した。「こうした状況ではもっと劇的な行動が必要で、株式の3分の1以上の公開買い付けや大規模な特別配当などを期待している」と語った
  • タツモ:半導体製造装置を手掛ける。サイオンは5.1%を保有(ブルームバーグ集計データ調べ)。「対象とする市場の潜在力を高めるため、自社事業に投資する必要がある」とバーリ氏
  • ヨータイ:高炉向けなどに耐火物を製造。同社には3月末時点で44億円の現金および同等資産があり、自社株買いするべきだとバーリ氏。サイオンは5%保有
  • 三精テクノロジーズ:エレベーターや舞台装置、テーマパークの乗り物などを製造。「債務を返済しキャッシュフローを改善させ、次の買収に備えるべきだ」とバーリ氏

タツモとヨータイ、三精テクノロジーズ、トーセイ、アルプス技研、村上開明堂はコメントを控えた。カナモトと日本ピラー工業の広報担当者は今のところコメントはないとしている。

原題:Michael Burry Discloses Investments in Five Japanese Companies