20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の閉幕後に記者会見する麻生太郎財務相(中央)、黒田東彦日銀総裁(右)=18日、ワシントン
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の閉幕後に記者会見する麻生太郎財務相(中央)、黒田東彦日銀総裁(右)=18日、ワシントン

 【ワシントン時事】18日(日本時間19日)に閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、減速傾向が強まっている世界経済への対応が重要なテーマとなった。米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱問題など世界景気をめぐる不透明要因が多い中、出席者は「緊張感を共有」(麻生太郎財務相同行筋)したが、協調して具体的な政策を打ち出すことはできなかった。

 国際通貨基金(IMF)は開幕直前、2019年の世界経済の成長率予想を下方修正し、金融危機後で最低の3.0%にとどまるとの見通しを公表した。米中摩擦の長期化で世界貿易が伸び悩み製造業が打撃を受けたほか、緊迫する中東情勢など地政学リスクの増大も響いた。

 IMFは20年の成長率についても、ドイツは従来見通しより0.5ポイント低い1.2%に下方修正し、中国は6%の大台を下回ると予測した。ムニューシン米財務長官も18日、「主要国では成長の減速が想定より長く、深くなる可能性がある」と懸念するコメントを出した。

 金融危機後、日米欧はいずれも長期間の金融緩和を実施している。G20会議では世界的に緩和余地が減少しているとの指摘も出ており、財政政策に期待する声が各国で高まりそうだ。

 一方、同日の記者会見で、黒田東彦日銀総裁は「日本の金融政策の余地が限られていることはない」と強調した。麻生氏は「日本の経済状況は悪くない」と述べながらも、「デフレ不況からの脱却は金融だけでできるほど軽くない」として、必要に応じ財政出動で景気を浮揚させる考えを改めて示した。

 米中両国は今月中旬、交渉を通じて「第1段階の合意」に至り、米国が対中関税の引き上げを回避した。麻生氏も「緊張感が和らいでいる」と歓迎したが、米中摩擦の抜本的な解決策は見通せていない。これまでに引き上げられた関税は引き続き貿易の阻害要因となる。

 IMFのゲオルギエワ専務理事は17日の会見で「停戦ではなく和平が必要」と述べ、米中が歩み寄ることで貿易摩擦をめぐる不確実性が取り除かれると訴えた。ただ、今後の交渉が難航して関税引き上げが再開されれば、世界経済への打撃は一層大きくなる。