[北京 14日 ロイター] – 中国の政治指導部は、長引く不動産バブルが長期的な経済成長基盤を損なう事態を懸念しており、たとえ景気が減速していても、不動産セクターを厳しく規制する基本方針を維持する公算が大きい。ただ、実行面で手綱が多少緩められる可能性はある――。これが政策関係者や専門家の見方だ。 

彼らの話を聞くと、習近平国家主席は短期的な痛みが増すことをいとわず、直近に導入した一連の不動産規制を断固推進する構えに見える。この姿勢は、経済成長がおぼつかなくなった段階で規制が骨抜き状態になりがちだった過去の対応とは、まるで違っている。

習氏の決意は、中国経済の不動産セクターに対する依存を減らし、各種資源をハイテクなど新しく台頭してきた分野に振り向け、成長をけん引させようという長期的な構造改革に政府が取り組んでいることに根ざすものだ。

ただ、他の産業が急拡大しているとはいえ、不動産は建設など関連セクターを含めると、なお国内総生産(GDP)の25%強を占める。

その中国経済は、新型コロナウイルスのパンデミックから目覚ましい回復を見せたものの、足元で失速の気配が漂う。

不動産規制のほか、原材料不足、供給網の混乱、消費低迷といった悪材料に加え、最近は幅広い地域での電力不足という逆風まで吹いている。

また、不動産開発大手、中国恒大集団が3000億ドル余りの債務を抱えて経営危機に陥ったため、中国では不動産セクター発の信用リスクが経済のより幅広い範囲に影響を及ぼすのではないかとの懸念が、海外でも強まってきた。

経済政策面で習氏の側近ナンバー1である劉鶴副首相は繰り返し、金融リスクの危険性を警告。銀行保険監督管理委員会主席と人民銀行(中央銀行)の共産党委員会書記を兼務する郭樹清氏は、不動産を「灰色のサイ」と描写している。灰色のサイとは、高い確率で問題が起きることが分かっていながら軽視されている事象を指す

指導部内の政策議論に関係しているある人物は「不動産規制は痛みを伴うだろう。しかし、これは成果を得るために必要な対価なのだ。過去を見ると、われわれは経済の下振れが原因で常に規制を緩和しているが、今回の指導部の決心は非常に固い様子だ」と明かした。

<「三道紅線」>

これまで中国では、何年にもわたってさまざまな不動産価格の抑制策が講じられてきた。だが、住宅価格は手の届かない水準に跳ね上がり、出生率を上げて少子高齢化と人口増加率の鈍化に対処しようとしている政府の足を引っ張っている、と専門家は解説する。

そこで、昨年8月に当局が規制を強化。人民銀行は不動産開発会社の債務動向を監視・管理する手段として「三道紅線(3つのレッドライン)」と呼ばれる措置を導入し、借り入れ制限や債務リスク抑制に乗り出した。

もっとも中国の不動産セクターは規模が大きく、地方政府にとっては重要な収入源で、住宅価格が急落すれば社会情勢が不穏になるリスクもあるだけに、規制政策の失敗がもたらすコストは非常に大きくなる。

中国銀行の調査主任、ゾン・リャン氏はロイターに「われわれは不動産セクターの安定を優先すべきだ。不動産価格の急騰も、多くの不動産開発会社が破綻するのも望んでいない」と語った。

<部分的な軌道修正>

人民銀行が不動産開発会社に対し、債務圧縮とバランスシート調整を強く求める姿勢は変わりそうにない。とはいえ関係者や専門家は、一部の金融機関による行き過ぎた与信の引き締めを是正するような部分的な政策修正は、あるかもしれないとみている。

恒大集団の債務危機が深刻化した今年9月、人民銀行は住宅購入者が持つ正当な権利と利益は保証すると表明。志信投資のチーフエコノミスト、リャン・ピン氏は「三道紅線自体は変化しそうにはない。しかし、その運用ルールは若干緩められてもおかしくない。不動産向け融資の基準は緩和されなくても、融資規模がある程度増加する可能性がある」と述べた。

専門家によると、投機筋ではない純粋な住宅購入者向け融資の拡大余地が認められたり、比較的健全な不動産開発会社がより手厚い支援を受けられたりする展開もあり得るという。

ノムラのチーフ中国エコノミスト、ティン・ルー氏は「景気減速が強まる中で、政府が財政と金融の緩和を強化すると想定している。ただ、不動産セクターと二酸化炭素排出量の多いセクターへの厳しい態度は、総じて維持されるだろう」と指摘している。

それでもルー氏は、一部地方政府が独自に導入した規制の緩和や補助金積み増しなどに動くのではないかとの見方も示した。

(Kevin Yao記者)