ロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席=北京で2022年2月4日、AP

 ロシアによるウクライナ侵攻について中国では、政府やメディア、世論のロシアへの心情的な「肩入れ」が目立つ。

 中国内のインターネット利用者を対象に3月28日から4月5日にかけて4000人以上の回答を得た米シンクタンク「カーターセンター」の調査によると、「ロシアを支援することが中国の国益だと感じるか」との問いに約75%が「感じる」と答えた。

 ただ、ウクライナでの戦争が始まってすでに2カ月半。ロシア軍による民間人の虐殺も明らかになった。ロシア寄りの姿勢をとり続ける中国の立場は、ますます合理的な説明が難しくなっている。ロシアに対する心情的支持を続けるのはなぜか。ウクライナ侵攻に対する中国の見方は今後、変化するのか。

 最近まで中国外交学院教授として勤務し、外交問題で中国政府のアドバイザー役も務めた蘇浩・同済大学高級研究員に4月26日、話を聞いた。中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」では約39万人が蘇氏をフォロー。国際問題に関する解説が中国内で多くのファンを集める論客でもある。ポイントをそのまま紹介したい。

「プーチン大統領のやり方は間違っている」

 Q ロシアとウクライナとの戦争で、中国がロシア寄りなのはなぜか。

 A そう見えるかもしれないが、それには理由がある。一つには伝統的に中国はロシアとの関係が深い。もう一つ、より大きな背景を説明しよう。世界は過去数百年、西欧諸国の文化、経済、軍事的な影響力の中にあった。そうした時代を私は「海洋時代」と呼ぶ。海を通じて他国を支配し、植民地化した時代だ。海軍力を背景にした英国、そして米国による「平和」もそうした時代の産物だ。しかし、もはや「海洋時代」は終わろうとしている。そして、中国、ロシア、インドといった国が大陸を通じて連結を深める「新大陸時代」が来るというのが私の考えだ。

 習近平国家主席は「歴史の交差点」という言葉を使ったが、まさに国際社会は今、そうした転換点にある。長期的傾向として大陸の時代が来る。こうした転換期にあって、中国にとってロシアとの関係は、極めて重要だ。また、ドイツ、フランスも大陸に基盤を置く国だ。米国や英国とは違う。中長期的には独仏も大陸国家同士の連結を増進しようとする、と私は考えている。

 Q しかし、今回の戦争のやり方を見て、ロシアに明るい未来があるようには見えない。

 A 中国はウクライナとも良好な関係を維持してきた。主権や領土は守られるべきだというのが中国の立場だ。ロシアには大陸国家としての未来があるが、今回はウクライナで力によって問題を解決しようとする古い手法を使った。こうしたやり方に私は賛成しない。もし、私がプーチン大統領のアドバイザーなら、「停戦すべきだ。中国のやり方に学び、合理的な選択をすべきだ」と言うだろう。

 Q 「中国のやり方」とはなにか?

 A 国際関係における問題を経済的、社会的な相互関係を深めることで解決していくというものだ。(中国が進める巨大経済圏)「一帯一路」は、その典型だ。もともとロシアとウクライナは人的にも経済的にも結びつきが深かった。ロシアは分裂を広げるよりも、結びつきをより強化するよう努力すべきだった。プーチン氏のやり方は間違っていたと思う。…

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