日経新聞(Web版)で「人口と世界」と題した特集を読んだ。「プーチン氏と『ロシアの十字架』出生数減、野心の原点」とタイトルされている。旧ソビエト体制が崩壊した1992年、社会や経済の混乱でロシアでは出生数が急落し、逆に急増した死亡者数がグラフ上で十字架を描くように交差した。これが「ロシアの十字架」と呼ばれえる人口減少問題である。プーチンは2000年の大統領就任以降、「人口減は国家存亡の危機だ」と主張、この問題に対する危機感を強調した。そして人口増を国家目標に掲げ「母親資本」と呼ぶ給付制度を設け、「第2子誕生以降の教育費や住宅購入費などを対象に、平均年収の1.5倍に相当する25万ルーブル(当時約115万円)の補助金制度を設けた」(日経web版)という。要するに人口増加に取り組んだというわけだ。そのプーチンがウクライナで多数の子供を含め無差別大量殺戮をおこなっている。「愚か」としか言いようがない。

愚かなプーチンがやったこと。「2014年ウクライナ南部クリミア半島の併合を宣言し、統計上の人口を約260万人増やした」。ウクライナ全土の制圧を目指した当初の侵略計画の中には、人口増の願望があったのかもしれない。ロシアは移民国家でもある。25年までに「最大1000万人の移民を招く目標を掲げる」(同)とある。ウクライナ東部から強制移住させた数十万人のウクライナ人は移民として扱われるのかもしれない。愚かで厚かましい。これがプーチンの本質か。現在の人口は約1億4000万人強。世界9位だ。1950年には世界第4位だった。「国連予測では2050年に14位に下がる」(同)。ただし旧ソ連諸国を合わせれば依然として第7位で、「4位の米国と同じく3億人を超す規模」(同)になる。ウクライナ侵略の背後にあるのはロシアの安全保障だが、そのさらに奥には人口問題があるのかもしれない。

人口規模は日本も似たようなもの。もう何十年も少子化と高齢化に悩んできた。その日本についてかのイーロン・マスク氏は数日前、「出生率が死亡率を上回るような変化がないかぎり日本はいずれ存在しなくなるだろう。これは世界にとって大きな損失となろう」(同)とツイートした。このツイートが一部で反響を巻き起こした。お騒がせマスク氏ならではのツイートだが、個人的には「日本はいずれ存在しなくなる」との表現より、「これは世界にとって大きな損失となろう」との認識にホッコリした。マスク氏はいいやつだ。日経新聞が「直感が鋭く、物事の本質を見抜く力を備えている人」と評価するマスク氏、日本人の誰よりも日本の価値を知っているのかもしれない。日本の政治家よ、マスク氏の爪の垢を煎じて飲めと言いたくなる。プーチンに言いたいことはただひとつ。「早く去れ」。