[東京 29日 ロイター] – 日銀の黒田東彦総裁は、日本経済は世界的なインフレ傾向の影響をそれほど受けていないとして、超緩和的な金融政策を維持すると述べたほか、15年間のデフレ経験により国内では賃金の伸びが抑えられていると指摘した。

国際決済銀行(BIS)が29日、スイス・バーゼルで26日に開催されたセミナーの録画を公表した。

動画によると、総裁は日本のコア消費者物価指数(CPI)上昇率は5月に2カ月連続で2.1%に達したとしつつ、ほとんどがエネルギー価格の高騰によるものと説明。1年ほどは2%前後で推移するかもしれないが、来年度には1%前後に鈍化するだろうと述べた。

「他の経済と異なり、日本経済は世界的なインフレ傾向の影響をそれほど受けていないため、金融政策は緩和的であり続けるだろう」と明言。13年まで続いた日本の15年間のデフレの余波で、国内企業は価格や賃金の引き上げに「非常に慎重」になっていると述べた。

また、「経済は回復し、企業は高水準の利益を記録した。労働市場はかなりタイトになった。しかし、賃金はあまり増えず、物価もあまり上昇しなかった」と述べた。

黒田総裁はこのほか、地政学リスクやデジタル化などさまざまな構造変化が世界経済に与える影響を評価することは「極めて困難」と指摘。「いずれにせよ、中央銀行の使命は変わらない。不確実性のある変化の激しい世界で政策の伝達経路が変わる可能性はあるものの、それは経済発展のために金融政策で物価を安定させることだ」と述べた。