[ワシントン 10日 ロイター] – 台湾周辺での中国の軍事演習を受けて米政権当局者が対中関税を巡る考えを見直し、選択肢をいったん保留したと、事情に詳しい関係者らが明らかにした。

バイデン政権は物価高騰に対応するため、トランプ前政権が導入した対中関税の軽減に向けて数カ月にわたりさまざまな方法を議論してきた。

一部関税の廃止、通商法301条に基づく追加関税の可能性を巡る新たな調査開始、調達先が中国に限られている米企業を支援するための関税除外リスト拡大といった選択肢の組み合わせが検討されてきた。

11月の中間選挙を前にバイデン氏にとってインフレ抑制は大きな目標だが、ペロシ下院議長の台湾訪問に対する中国の反応を受け、政権高官は方針見直しを迫られている。緊張を高めると受け止められかねない措置を望まない一方、中国の敵対的な姿勢を受けて引き下がったとみられることは回避したい考えだ。

最新の状況に詳しいある関係筋は「台湾が全てを変えた」と述べた。

ホワイトハウスのシャーマ報道官は「大統領は台湾海峡における出来事以前の時点で決定を下しておらず、現在も決定していない。何も棚上げや保留にはしておらず、全ての選択肢がテーブルに残っている」と述べた。

レモンド商務長官はブルームバーグTVのインタビューで、決定に時間がかかっている理由を問われると「ペロシ氏の訪台後(地政学的状況が)特に複雑になっており、大統領は選択肢を吟味している。大統領は非常に慎重だ。米労働者の痛手になることをしないよう努めている」と述べた。

<除外リストが焦点に>

関税の軽減と強化に関する最も強力な措置が当面おおむね棚上げされるとみられる中、除外リストが焦点となる。

トランプ前政権は、重要工業部品や化学品を含む2200以上の輸入品目について関税除外を承認していたが、昨年1月のバイデン氏就任時にこれらは失効。タイ米通商代表部(USTR)代表が復活させたのはこのうち352項目のみで、業界団体や議員らは大幅な対象拡大を求めている。

<複数の要因>

台湾を巡る問題に加え、複数の要因が米政権の議論を複雑にしている。

関係者2人によると、米当局は関税の一部廃止検討に際し中国に同様の対応を求めたが、中国側はこれを退けた。

関係者の1人は、米国が対中関税の一部を単独で廃止する案は保留になったとし、中国が相互的な措置を取る意思を示さず、第1段階の通商合意も守っていないことが一因だと述べた。

在ワシントン中国大使館の報道官は、両国の経済・貿易関係は「厳しい」課題に直面していると指摘。「(ペロシ氏の)訪問は中米関係の政治的基盤を損ない、両国の交流と協力に大きな混乱を招くのは必至だ」とロイターに述べた。