円相場の急落が凄まじい。たまりかねたように財務省と日銀、金融庁はきのう「国際金融資本市場に関する情報交換会合(3者会合)」を開いた。会合後に会見した神田真人財務官は「投機的な動きも背景にあり、明らかに過度な変動だ」とけん制。「このような動きが継続すれば、あらゆる措置を排除せず必要な対応を取る準備がある」と強調した。いつもの口先介入。これで急激な円安が止まるわけがない。彼らもそんなことは十分承知の上だろう。根本的な原因はアベノミクスであり、金融面でこれを推進した黒田総裁主導の「YCC(イールド・カーブ・コントロール)」にある。急激な円安は輸入物価に跳ね返り、インフレを助長する。庶民を守るためには黒田日銀総裁を退任させるか、本人が拒めば任命権者である岸田総理が解任するか、解決策は2つにひとつ。きのう総理は10月に総合経済対策をまとめると宣言した。ちょうどいい機会だ。

総裁解任を主張している人は政治家にも官僚にも有識者にも見当たらない。だからあえて言う。異次元緩和に固執する黒田総裁をやめさせない限り、この円安を止めることはできない。一刻も早く黒田体制に終止符を打ち、異次元の金融緩和政策を軌道修正すべきだ。ここまできてしまうと方針転換は速やかに、具体策の実行は時間をかけるしかない。高千穂大准教授の内田稔氏のコラムが分かりやすいです。「現実味増すドル147円、並行する円の信任低下」(ロイター)がそれだ。内田氏はどうしてこのような急激な円安になるのか、わかりやすく解説している。興味のある方はご一読を。外国為替市場というのは内外に潜在する投機家と金融当局との戦いの場でもある。業を煮やした金融当局はきのう、為替介入が念頭にあるかとの記者の質問に、「文字通りあらゆる選択肢を検討の対象としている」(神田財務官)と語った。「米国を含めて各国当局と緊密に連携し、しっかりと意思疎通できている」とも強調した。米国の威を借りた為替介入の脅しである。

投機家たちがこの程度の脅しで怯むようなら金融当局も苦労はないだろう。市場介入すれば投機家の餌食になる。当局だってわかっている。問題を解決するには岸田総理と黒田総裁の“決断”が必要なのだ。だが、国葬を決断した総理はいま国民の大反発にあっている。黒田氏は「異次元緩和を維持するしか手がない」と開き直る。元日銀理事の早川氏でさえ「YCCが為替変動を増幅している」と指摘している。岸田総理はきのう、国葬に関する閉会中審査で安倍元首相の葬儀は「国葬儀」として行うと答弁している。要するに国葬なら天皇が関わる国事行為、国葬儀は内閣が行うもので内閣府設置法の範囲内で行えると答弁した。これを聞けば誰だって「2つを分ける基準は何?」と聞きたくなる。不信感はエンドレスに続く。同じことが円安でも起こっている。原因をはっきりさせないで対処療法に走る。日本という国の致命的な欠陥だ。