[ラスベガス 3日 ロイター] – 米ネバダ州ラスベガスでは、共和党の活動家が、トランプ前大統領が根拠なしに主張する不正選挙説を支持する地元指導者から自分たちの党を取り戻すことを願っている。一方、サウスカロライナ州マートルビーチでは、地元の共和党資産の管理をめぐる争いが裁判所で決着した。ノースカロライナ州では、共和党の活動家が、同性婚の権利を支持するトム・ティリス上院議員を処分する方法を模索している。 

2024年の大統領選挙に向けた運動がスタートする中で、米国の多くの地域では共和党の地方組織が造反や内紛、法廷闘争などで消耗しており、党幹部や戦略担当者の中には、ホワイトハウス奪還の展望に陰りが生じるのではないかという声がある。

ロイターでは、2020年の大統領選でトランプ氏が惜敗した激戦州のアリゾナ、ジョージア、ネバダの各州、同氏が勝利したノースカロライナ州、予備選が早期に行われるため注目されるサウスカロライナ州で、共和党の運動員、活動家、党幹部50人以上に取材した。ネバダ州は、早い時期に大統領候補指名に向けた予備選挙が実施される。

連邦議会における共和党内の対立は広く報道されているが、ロイターが注目したのは草の根レベルでの対立だ。特に、激戦が続くいくつかの小規模州については十分な検証が行われていない。

一部の戦略担当者や党幹部は、激戦州や予備選が早期に行われる州での党内対立が話題になってしまえば、有権者や献金者の離反を招く恐れがある、と警告する。

「こうした内紛に私たちがどの程度対応できるかによって、大統領候補の戦いぶりも変わってくるだろう」と語るのは、サウスカロライナ州チャールストン郡の共和党委員長モーリス・ワシントン氏。同郡は大統領候補の遊説先として定番の地で、ワシントン氏自身も党内右派からの批判にさらされている。

「行動パターンしだいで中道の有権者が離反してしまう可能性は常にある」とワシントン氏は言う。

選挙に向けたサイクルの中でこうした党内抗争による直接の影響を見極めるには時期尚早であり、大統領候補が指名されれば内紛も収まっていく可能性はあるが、共和党の中央運営組織である共和党全国委員会のロナ・マクダニエル委員長は団結を呼びかけている。

メリーランド州知事を2期務め1月に退任したラリー・ホーガン氏は、トランプ氏に対して批判的だ。ロイターの取材に対し、2024年の大統領選挙で共和党が勝利したいのであれば、前大統領を乗り越えることが肝要だと語った。

2022年11月の中間選挙で、民主党が予想以上に善戦し共和党の「赤い波」を回避することができた理由の1つは、トランプ氏が応援する多くの保守強硬派候補を有権者が敬遠したためだ。

「過去3回の選挙で、有権者は明確なメッセージを送っている。有権者は、さらなる狂気ではなく、有能さと常識的な解決策を求めている」とホーガン氏は言う。「再び勝利をめざそうというのであれば、まずそうした声に耳を傾けなければならない」

だが、誰もが同じ意見というわけではない。ノースカロライナ州選出のマーク・ブロディ下院議員はティリス上院議員に対する処分を支持しているが、意見の相違に真っ向から取り組む方が勝ると主張する。

「私たちが戦っている相手の1つは、『これについては触れないでおこう』という態度だと思う。『嫌がる人もいるかもしれないから、この話はやめておこう』と言う人もいる」とブロディ下院議員は言う。「しかし私としては、『議論をして、しっかり決着させよう』と言いたい」

<ネバダ州:党内の造反>

ネバダ州クラーク郡は、同州の人口の3分の2以上を抱えている。郡共和党のトップ幹部だったマーガレット・ホワイト氏は、50人ほどの現・元党員の先頭に立ち、激戦州であるネバダ州で現在クラーク郡の共和党委員長を務めるジェシー・ロー氏に対して造反を起こしている。

ホワイト氏によれば、ロー委員長が選挙不正に関するトランプ氏の根拠なき主張を支持し、昨年11月の中間選挙で極右候補者を応援したことが、2024年に向けた党勢を損なっているという。中間選挙では、ロー委員長が応援した州・地方レベルの候補者の大半が落選した。

活動家らは先月、「ラスベガス理性の声」と名乗る非営利組織を設立するための申請書類を提出した。申請者であるホワイト氏と、郡共和党のメンバーであるドリュー・ハースティ氏はロイターの取材に対し、正式な組織とすることで、共和党支持者だけでなく、無党派の有権者からも献金を集めることが可能になる、と語った。

ホワイト氏によれば同団体は、ロー委員長が就任した2021年以降に党の役職を離れた、あるいは解任された400人の共和党員に接触し、夏に行われる選挙でロー氏を退けられるよう、投票登録を行うよう呼びかけた。

ホワイト氏はロイターに対し、「私たちは、穏健派や無党派、マイノリティーにアピールできるよう、ジェシー・ロー氏ではなく、ノーマルな人物をトップに据えたい」と語った。

ホワイト氏は、共和党はもっと広範囲の有権者にアピールする必要があり、そうしないと選挙には勝てないと言う。同氏のグループの中心メンバー50人のうち、約半分は黒人、ヒスパニック、アジア系で、ネバダ州の多様な人口構成を反映している。ロー委員長は、11月の中間選挙で敗北した極右の候補者数人を応援していた。

ロー委員長は、2016年と2020年に、ネバダ州におけるトランプ陣営の幹部を務めていた。クラーク郡共和党にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

共和党員としてポッドキャストを配信しているジョン・ブルックハーゲン氏は、どちらの派閥の人間とも付き合いがあると断りつつ、ロー委員長は投票率向上と候補者の宣伝に奮闘してきたものの、足下の党内分裂がひどいせいで、「無理難題」を抱えてしまっていると話す。

1月、クラーク郡での党内抗争は激しさを増した。ラスベガスで行われた同郡共和党の中央委員会の際に、ホワイト氏が党員とにらみ合いを演じたからだ。

昨年、ロー委員長による党指導に抗議して役職を退いたホワイト氏は、2人のボディーガードと共に姿を現した。その1人はラスベガス警察の元警部補ランディ・サットン氏で、ロイターに対し、外から見えない状態で銃器を持って会場に向かったと述べた。

ホワイト氏は警備員に退去を命じられた。サットン氏はロイターに対し、ホワイト氏の出席に異議を唱えたグループに加わっていた共和党員の1人から喧嘩を売られた、と語った。

この衝突についてロー委員長と郡共和党に問い合わせたが、回答は得られなかった。

<アリゾナ州:予備選ルール変更の試み>

かつては保守の地盤だったが近年では激戦州となっているアリゾナ州では、2020年の選挙結果を否定する保守強硬派の候補者にへきえきした共和党員のグループが、予備選をすべての有権者に開放することを求め、州憲法の改正に関する住民投票を実現すべく募金と署名集めを進めている。この運動に参加している共和党員のビジネスマン、ボー・レイン氏が語った。

レイン氏は昨年、アリゾナ州務長官に立候補して落選した。同氏のグループ「セーブ・デモクラシーAZ(アリゾナ州の民主主義を救え)」が望んでいるのは、予備選のプロセスで、もっと穏健で分裂をあおらない候補者が増えることだと語る。

<サウスカロライナ州:党資産をめぐる闘い>

サウスカロライナ州で最も人口の多い郡の1つでは、トランプ前大統領の根拠なき不正選挙の主張を支持するロジャー・スレイグル、チャド・ケイトン両氏が率いる極右の分派が「十分に保守的でない」と見られる候補を拒否している。

名指しされた候補には、サウスカロライナ州知事を2期務め、2月に大統領選出馬を表明したニッキー・ヘイリー氏、やはり大統領選に出馬するとの観測が広がっているサウスカロライナ州選出のティム・スコット上院議員、そしてマイク・ペンス前副大統領などが含まれている。

この郡の共和党はペンス前副大統領をイベントに招こうとしたが(結局、その後ペンス氏側がキャンセルした)、ケイトン氏はロイターへのテキストメッセージで、この動きを「トランプ氏を締め出そうとする策略」の一環であると批判した。

スコット上院議員の事務所はコメントを控えるとしている。ヘイリー氏の広報担当者にもコメントを求めたが、回答は得られなかった。

対立は昨年9月にさかのぼる。スレイグル氏とその同調者は一時的に離党したものの、郡共和党のウェブサイト、銀行口座、折り畳み式のテーブルと椅子をそのまま管理していた。裁判所は先月、スレイグル氏のグループに椅子の返却を命じた。

双方とも、銀行口座についても訴訟になる可能性が高いと認めている。郡共和党の正式な指導者であるリース・ボイド氏は、「そんな訴訟のために党の資金を使いたいと思うか。答えはノーだ」と語る。「私たちは同じ屋根の下にいるのに、互いにマシンガンを撃ち合っている。誰にとっても生産的ではない」

<ノースカロライナ州:州選出上院議員へのけん責処分>

ノースカロライナ州内の約3分の1の郡では、郡共和党委員会が、同性婚の権利を支持しているティリス上院議員に対する処分を可決している。現在では州共和党レベルでのけん責処分を模索しており、実現すれば、上院選に向けて予備選挙が開催される場合、ティリス氏は党のリソースや資金を利用できなくなる。

ティリス氏は共和党主流派のあいだでは今も支持されているが、ある郡の共和党委員長を務めるジム・ウォーマック氏は、同議員に対する批判が勢いを増していると語る。

「ノースカロライナ州の共和党は、いずれは草の根の勢力が実際の党運営に携わるくらいまで分権化されるだろう」

ティリス上院議員にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

(Gram Slattery記者、Tim Reid記者、Alexandra Ulmer記者、翻訳:エァクレーレン)