[東京 15日 ロイター] – 政府は、次年度以降の歳出を裏付ける「経済財政運営と改革の基本指針(骨太方針)」を16日に正式決定する。決定に先立つ自民、公明両党の協議で、原案からの加筆・修正箇所は細かい文言調整や脚注も含め100カ所を超える。早期の衆院解散・総選挙をにらみ少子化対策の恒久財源は示さず、防衛増税の開始時期も先送りに含みを持たせた。

与党の修正協議を踏まえた文書をロイターが確認した。岸田文雄首相の解散判断に先立つ方針案は、事実上の選挙公約となることも予想される。

首相が推進する「新しい資本主義」の加速では、構造的に賃金が上昇する仕組みを構築するため、地方や中小・小規模企業の生産性向上を図るとともに「価格転嫁対策を徹底し、賃上げ原資の確保につなげる」と追記する。最低賃金を巡って「地域間格差の是正を図る」との考えも示す。

グリーントランスフォーメーション(GX)に向けては、米国の取り組みを参考に、「国産の持続可能な航空燃料(SAF)を国際競争力ある価格で安定供給できる体制を構築する」ことも記す。水素の充填(てん)インフラ整備の支援も新たに盛り込む。

焦点となる少子化対策では、骨太に先立ち13日に決定した「こども未来戦略」を反映させ、急速な少子化・人口減少に歯止めをかけなければ「世界第3位の経済大国という立ち位置にも大きな影響を及ぼす」と強調する。

今後3年間で、1)児童手当の拡充、2)出産などの経済的負担の軽減、3)医療費の負担軽減、4)高等教育費の負担軽減――などを進める一方、財源確保に向けては「消費税を含めた新たな税負担は考えない」との考えを記す。

防衛力強化に伴う税財源を巡り、「2024年以降の適切な時期」とする増税開始時期にも言及する。25年以降の後ろ倒しも視野に「5兆円強の確保を目指す税外収入の上積みや、その他の追加収入を含めた取り組みの状況を踏まえ、柔軟に判断する」との表現に改める。

併せて閣議決定する新しい資本主義を実行に移す成長戦略では、産業雇用安定助成金を活用して企業の「在籍型出向」を推進することや、未上場株の取引環境の整備に向け、セカンダリー市場にとどまらず「プライマリー市場についても資金調達のあり方について検討する」ことなども文書に加える。

(山口貴也、金子かおり)