Josh Wingrove、Joe Deaux

  • 国内産業保護が優先事項、米政権は日鉄の対中エクスポージャー懸念
  • USスチール買収計画、すでに米国内で政治的な火種に
Emissions rise from chimneys at the Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp. plant in Kashima, Japan.
Emissions rise from chimneys at the Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp. plant in Kashima, Japan. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

バイデン米政権は日本製鉄と中国との関係について調査している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。米鉄鋼大手USスチール買収の実現に向け、障害となる可能性がある。

  米政権は国内産業の保護が優先事項だと考えており、日本製鉄の中国エクスポージャーを懸念していると、関係者らは匿名を条件に話した。トランプ前大統領が通商法301条に基づき導入した対中関税をバイデン大統領は維持しており、将来的には中国産の鉄鋼とアルミニウムへの関税をさらに検討する可能性もあると、関係者らは述べた。

  日本製鉄にとって複雑なのは、USスチール買収により中国産鉄鋼の米市場へのアクセスが拡大し得るかどうかを巡り、規制当局が買収を好ましくないとみる可能性があるほか、政権は鉄鋼が米市場でダンピング(不当廉売)されるのを防ぐため、関税などの措置を行使していることだ。

Nippon Steel Plant As The Company Agrees to Buy US Steel for $14.1 Billion
日本製鉄の鹿島工場Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  大統領選の激戦州であるペンシルベニア州に本社を置き、米国を代表する企業であるUSスチールの買収に向けた日本製鉄の計画は、すでに米国内で政治的な火種となっている。対米外国投資委員会(CFIUS)が買収の認可を巡り審査している。

  中国資産がCFIUSの審査で明確に取り上げられるかは不明。それでも、日本製鉄の同資産を巡る精査は、バイデン政権が中国により厳しい貿易措置を検討する中で、取引に新たな複雑さを加える恐れがある。

  日本製鉄によるUSスチール買収は労働組合の反対に直面している。また、大統領選で共和党候補の指名獲得が有力視されるトランプ前大統領も、返り咲きを果たせば買収を阻止する意向を示す。バイデン政権は労組の雇用と国内鉄鋼セクターの保護を示唆しているが、承認の条件とするには至っていない。

トランプ氏、自分が当選なら「絶対」阻止-日鉄のUSスチール買収

  日本製鉄の2023年の株主向け統合報告書によると、世界的な生産拠点の中で、同社は中国に9つの施設を保有。中国の鉄鋼需要が大きく伸びていた01年から13年に、これらの施設を資産ポートフォリオに加えていた。

  「日本製鉄の中国事業は非常に限定的であり、当社の世界生産能力の5%に満たない。川下事業のみであり、鉄鋼業で投資の大部分を占める高炉や電炉などの川上設備はない」と、同社広報担当者は資料で説明。「中国パートナーとの合弁を含め、当社の中国事業は米国など中国国外の事業運営やビジネス判断へのコントロールを持たない」と指摘した。

  また、同担当者は世界の鉄鋼市場でUSスチールの競争力を強化し、中国を主因とした業界の過剰生産と過剰生産能力の問題に対処することを目指すとした。

  ホワイトハウスと財務省はコメントを控えた。

  トランプ前大統領は在任中に通商拡大法232条に基づく鉄鋼追加関税を賦課。中国からの鉄鋼輸入の大半は事実上取り除かれたが、メーカーや米議会はメキシコなど近隣諸国を経由して出荷される中国製鉄鋼に関して警告を発している。

関連記事

原題:Nippon Steel’s China Assets Raise Concerns Over US Deal (2)(抜粋)