AIスタートアップ企業、アンソロピック(Anthropic)の爆走が止まらない。先週末の28日、同社は650億ドル(日本円に換算すると約10兆円)の資金調達を実施したと発表した。同社の創業は2021年であり、わずか数年前のことだ。米オープンAI(OpenAI)を離脱したダリオ・アモデイ氏(現CEO)ら7人によって設立されたが、なんと創業メンバー全員がブルームバーグの「世界長者番付トップ500」に同時にランクインしたという。
これを新たなアメリカンドリームの始まりと言わずして、何と言えばいいのだろうか。しかし、記録は必ず破られるものだ。アンソロピックを凌駕するようなスタートアップは、これからもアメリカで続々と登場するだろう。
これに関連して頭に浮かんだのは、スペースXの創業者であるイーロン・マスク氏の発言だ。同氏は最近のインタビューで次のように語っている。
「現状のAIでも、ホワイトカラーの仕事の半分は置き換え可能な状態に近づいていると思います。教育を含め、情報を扱う仕事のすべてです。原子を操作する(物理的な動力を伴う)以外のあらゆる業務において、AIは今すでにその半分以上をこなせるでしょう」。まさに、AIによる超絶進化論だ。
マスク氏の話を続けよう。
「かつて『コンピューター』とは機械ではなく、計算を行う人間の職務の名称でした。ネット上には、高層ビルいっぱいに並んだ(主に女性の)労働者が、台帳から台帳へ数字を書き写している当時の写真が残っています。ビル全体が、机に向かって計算をする人々で埋め尽くされていたのです。銀行口座の利子計算や科学実験のデータ処理など、計算が必要なことはすべて人間がやっていました」。これを現代の言葉で一言に集約すれば、「ホワイトカラーの仕事」ということになる。
アンソロピックのAI「クロード(Claude)」は、手始めにこの領域を代替してみせた。さらに、同社が開発する高度なAIシステムは、プログラムに内在するバグを徹底的に洗い出す。この技術は防御に使えば完璧な盾となるが、ひとたび攻撃用に悪用されれば、世界中を恐怖に陥れる武器にもなり得る。このような画期的なAIを次々と開発するのだから、同社に資金を提供したいという投資家が雨後の筍のように後を絶たないのも頷ける。年内に予定されている株式公開(IPO)が実現すれば、米国市場は大活況に沸き返るだろう。トランプ大統領の政策云々に関わらず、アメリカは間違いなく「MAGA(Make America Great Again)」を体現することになる。
しかし、手放しで喜んでばかりもいられない。製品を作る製造機械、そしてそれを作る「AIロボット」が、人間の知恵を借りずに自ら新しいAIロボットを生み出す時代が来ようとしている。マスク氏は「シンギュラリティ(技術的特異点)はすでに始まっている」と断言する。人間生活に必要な物品はすべてAIロボットが作るようになり、それだけでなく、音楽や映像、小説といったクリエイティブな分野でも、AIロボット同士が国際的な賞を競い合うようになるかもしれない。
その時、経済はどうなるのだろうか。マスク氏は「あらゆる価格がゼロに向かって暴落する」と予言する。想像を絶する大デフレの到来だ。この価格破壊は、人間の生存競争を激変させるだろう。その先に何が待ち受けているのかは、誰にもわからない。
それでも、マスク氏は悲観していないようだ。人口が減少し、医療が進歩する中で、人類が月や火星に移住する日も現実味を帯びてくる。物の価格は暴落するが、企業業績は継続的に過去最高を更新し続ける。従業員はいなくとも、国民への利益還元策(ユニバーサル・ベーシックインカムなど)によって、多くのAI先進国における国民生活は、まさに“悠々自適”なものになるという。
このような時代になれば、核開発競争も終焉を迎えるだろう。高度なAIシステムは核兵器の脅威をも凌駕し、核による抑止力や領土拡大の野心はほとんど意味をなさなくなる。
そうなれば、トランプ、プーチンの両大統領や習近平総書記の時代が「いかに愚かだったか」が、いずれはっきりするはずだ。現にいま、高価なミサイルが格安のドローンに太刀打ちできない現実がある。そんな時代の変化を読み取れず、旧態依然とした領土拡大に心血を注ぐ旧来型の指導者たち。後世の歴史家は、彼らを時代に乗り遅れた「敗北者たち」と定義するに違いない。
※イーロン・マスク氏の言葉は、note「イーロン・マスクの長編インタビュー全文日本語訳:AGI、米中関係、雇用市場、クリーンエネルギー、ヒューマノイドロボットについて」から引用した。