- 日時:平成30年2月20日(火曜日)18時12分~18時57分
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室
1.発言要旨
経済財政諮問会議の概要について御報告いたします。
最初に「金融政策、物価等」についてと、「2020年東京オリンピック・パラリンピック前後の経済運営」について議論を行い、主な議論として、消費税率再引上げやオリンピック・パラリンピック開催を契機とする需要の変動を乗り越え、安定的な成長軌道に乗せていかなければならない。そのための機動的な財政運営が必要といった意見がありました。
次に、「外国人労働力」について、5年間のアベノミクスによって、様々な分野で深刻な人手不足が生じている。IT、AIによる生産性向上を進め、女性・高齢者の就業環境を整備するとともに、専門的・技術的な外国人受入れの制度の在り方について早急に検討を進める必要がある、といった議論がありました。
最後に、総理から締めくくりの発言がありました。
ポイントは、2014年の消費税率引上げ時の経験に鑑み、欧州の事例にも学びつつ、消費税率引上げによる駆け込み需要と反動減といった経済の振れをコントロールし、需要変動を平準化する具体策を政府一丸となって検討する必要がある。関係大臣の御協力をお願いしたい。
もう一点、外国人労働力に関しては、安倍政権として移民政策を採る考えがないことは堅持するが、専門的・技術的な外国人受入れの制度の在り方について、在留期間の上限を設定し、家族の帯同は基本的に認めないといった前提条件の下、真に必要な分野に着目しつつ、制度改正の具体的な検討を進め、夏に方向性を示したい。官房長官、上川大臣は、関係省の協力を得て、急ぎ、検討を開始してほしい、といった発言があったところです。
(資料)外国人労働力について
2.質疑応答
(問)外国人労働者についてですが、官房長官と上川大臣が中心となってということは、入管法の改正なども視野に入って検討と受け止めてよいのかということと、あと具体的に、関係省庁多々ありますが、どのように進めていくのかというのをお願いします。
(答)どういった制度について見直しをするか、今後の検討ということになってくると思いますが、まず先程申し上げたように、在留期間の上限を設定し、そして、家族の帯同は基本的に認めないといった前提条件の下での検討ということになります。そして、基本的に専門的・技術的な外国人の受入れの制度の中でその内容を見直していくということになるわけですから、おそらく介護であったり、建設であったり、運輸であったり、サービス、小売であったり、農業、それぞれの分野別にどういった能力が最低限必要なのであろうか、といったことを洗い出すことになります。
同時に、それぞれの分野で、例えば今、人手不足というのが現実に存在すると、これが例えばITとかAIによって、どこまで効率化できるのか。さらには女性・高齢者の方の就業環境を整備することによって、どこまで解消が進むのだろうか。そこで残った分野、充足できない分野について充足の仕方を、先程申し上げたような形で検討していくということであり、今の段階でどういう制度をどうするかというところは、正にこれからの検討課題ということになると考えています。
(問)需要の変動を最小限に抑えるという取組の方で、提言の中では「機動的な財政」という言葉があったと思うのですが、総理の言葉の中には「財政」という言葉は特になかったのでしょうか。
(答)「需要変動を平準化する具体策」という言い方です。総理の締めくくりの発言としてはそういう形でありましたが、大切なのは、これから消費税率の引上げがあるとなると、おそらく過去の経験から言うと、駆け込み需要、反動減が出る可能性があるわけです。
また、オリンピック・パラリンピック、これまでの海外の例から見ても、ある程度の投資がオリンピック前に進むことになります。そうするとオリンピックが終わった後、どのような形で例えばレガシー事業を進めるか等、色々なことがおそらく必要になってくるのだろうと思っており、単純に2019年の10月1日、それから2020年という1年だけではなく、もう少しそれぞれスパンを広げた中で、どのような政策を打つかということが必要になるのだと思います。
例えば2019年度の予算で考えてみると、この消費税率の引上げは4月でないということに留意しながら予算編成、そして執行を考えなければいけないのではないか、と考えているところでありますし、さらには単純に2020年の夏から秋にかけてという時期だけではなく、その後も含めて、いかに日本経済を成長軌道に乗せていくかも重要になってくると思っています。
そして、財政運営だけの問題ではなく、例えば民間、企業の側にもそういった経済の振れが起こることは決して良いことではないと思うので、その中でどのような対応ができるかということも一緒に検討、協力をしてもらうということになるのだと思います。
3.新原内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
平成30年第2回経済財政諮問会議について、概要を申し上げます。
本日は、「金融政策、物価等に関する集中審議」、「2020年東京オリンピック・パラリンピック前後の経済運営」、「外国人労働力」について議論を行いました。
最初に、茂木大臣から資料1「経済財政諮問会議の今年前半の主な課題・取組」について説明があった上で、黒田総裁から資料2、高橋議員から資料3について説明し、その後、意見交換を行いました。
主な御意見等を紹介いたします。
経産大臣から、「経産省では、電子タグを用いたサプライチェーンに関する情報共有の実験を開始した。サプライチェーン全体で無駄のない生産、流通を目指す取組など、情報の利活用を付加価値に変える流通革命を促したい。
中小企業の生産性向上についてプラットフォームを発足させ、92団体が参加を表明している。業務プロセス全体の見直しと、IT化の推進を中心とした、中小サービス産業の生産性向上を100万社規模で推進する。
消費税率引上げ前後の駆け込み需要と反動減への対応として、計画的な予算編成・執行とともに、産業界自身が消費意欲を喚起する新たな商品やサービスの投入、性能・デザインの改良を行うことは需要の下支え効果が期待できる。
プレミアムフライデーは今月で1年を迎える。認知度は高まっているが、定着へ向けた課題があるので、頑張っていきたい。」
民間議員から、「消費税率の引上げについて、財政政策の機動性の確保が必要で、駆け込み需要に上乗せするタイミングとなってしまっては遅いので、予算編成についてタイムリーな対応が重要である。
そして、企業の価格設定行動が重要である。日本では、税率引上げとともに転嫁がなされているが、駆け込み需要が強いときに価格を上げて、実際に税が投入されたときに反動減が生じたら価格を下げるといった調整も必要ではないか。」
別の民間議員から、「消費税率引上げ、オリ・パラ前後を乗り越え、持続的成長をすることで、アベノミクスの正念場である。オリ・パラ前年の2019年は、今上陛下の退位と皇太子殿下の御即位、ラグビーワールドカップ、G20等の大型の国際的イベントが日本で多くあり、世界のVIPや、インバウンドの観光客が来日する。2020年はオリ・パラ、2021年は関西のワールドマスターズゲームスといったイベントを、一過性の祝祭イベントではなく、持続的な成長につなげていく手段として捉えるべきである。そのためにも、レガシー事業などの大型投資といった、波及効果が高いものをすべきである。
1964年東京オリンピックでは、東海道新幹線、首都高が日本の基幹インフラとなった。2020年東京オリンピックに向けて、リニアや成田・羽田の高速交通等を検討していくべきである。また、ニューヨークのリンカーンセンターなどのようなレガシー施設の設置を都心にも考えるべき。
経済界では2020年に向け、ソフト・ハード面でのレガシー事業を考えており、安心・安全社会の形成、水素社会、ユニバーサル社会、革新農業等の検討が必要であり、こうした事業をより戦略的なものとすべく、政府とともに検討を行っていきたい。」
別の民間議員から、「観光について2020年以降、インバウンドを増加させていくことが重要である。ターゲットを絞って2025年の万博の誘致を見据えた長期的プロジェクトが重要である。」
財務大臣から、「消費税率引上げ時や、東京オリ・パラ前後の需要の変動に対しては、平準化を図ることを検討していきたい。」
次に、「外国人労働力」について事務方から資料4を説明し、その後、意見交換を行いました。
主な御意見等を紹介いたします。
民間議員から、「人手不足は生産性向上や、ロボットの導入といった対応が基本である。しかし、それでも現状の人手不足というのは厳しい状態にある。
日本が受け入れている外国人労働力は専門的・技術的分野だが、それ以外の人たちについては、国民のコンセンサスを得つつ、慎重に検討していく必要がある。女性や高齢者の参加を求めた上で、どの程度労働力が厳しくなってくるのか。
そして、保育士などの分野でも、どの程度の不足が出てくるのか、きちんと分野ごとに検討した上で、受入れを検討すべきである。
安倍政権は移民政策を取らないと言ってきているので、整合性はきちんと担保するという意味で、その滞在期間の上限を設ける、家族の滞在を認めないなど、きちんとルールメイクした上で、検討を進めるべきである。」
別の民間議員から、「地方の中小企業だけでは業種、規模によらず、外国人材抜きで対応ができない状況になってきている。大企業でも一部の産業では、人手不足で海外に出ていかざるを得なくなってきている。外国人材について、分野ごとに検討をして、本当に必要な分野については、新たな制度の検討を進めるべきである。」
別の民間議員から、「外国人労働者というのは労働者だが、これはもちろん人間、人として処遇をするということをきちんと国として考えるべきである。人に寄り添って考えていくべきである。したがって、低賃金労働力の穴埋めをするということではなくて、賃金、待遇は基本的にきちんと日本人と同等であるべき。
また、出入国管理について、これまで日本では入国管理法に基づき、水際で入るか入らないかの管理だけをしていたが、これからは在留管理をしていく必要がある。一人一人入ってきた人に対して支援をしていくということを、国としても体制を整えるべきである。」
法務大臣から、「外国人労働者受入れの基本的な考え方は、専門的・技術的分野の外国人は積極的に受入れを推進していて、法務省としても在留資格や上陸許可基準の見直し等を行う、受入れの推進を図っているところである。
一方、人手不足などを背景に、外国人労働者数は急増していて、法務省に対しては経済界等から外国人材の受入れ拡大の要請が寄せられているところである。
外国人労働者の受入れに当たっては、そのニーズや日本人の雇用に与える影響等、幅広い観点から、政府全体で検討することとされているが、法務省としては受け入れた外国人がしっかり社会に適応し、法制度に則った在留活動を行うことができるように、適切な支援を行う体制を、在留管理とともに、整えることが重要と考えている。」
財務大臣から、「外国人労働者については、造船業も人数が多く、質が高いので、ここを留意すべきである。」
官房長官から、「都市部では特別養護老人ホームが完成しても、2割が空室となっており、人手不足が要因となっている。介護の分野では外国人労働者の問題は待ったなしの課題であるということを留意していただきたい。」
最後に、総理から発言がありました。
「第一に、金融政策、物価等に関する集中審議を行った。
続けて、2020年東京オリンピック・パラリンピック前後の日本経済の運営について議論した。
民間議員からは、消費税率引上げやオリンピック・パラリンピック開催を契機とする需要の変動を乗り越え、安定的な成長軌道に乗せていかなければならないといった御意見をいただいた。
2014年の消費税率引上げ時の経験に鑑み、欧州の事例にも学びつつ、消費税率引上げによる駆け込み需要と反動減といった経済の振れをコントロールし、需要変動を平準化する具体策を政府一丸となって検討する必要がある。関係大臣の御協力をお願いしたい。
第二に、外国人労働力について議論した。
安倍内閣として、いわゆる移民政策をとる考えはない。この点は堅持する。他方で、5年間のアベノミクスによって、有効求人倍率が43年ぶりの高水準となる中で、中小・小規模事業者の皆さんをはじめ、深刻な人手不足が生じている。
生産性向上や女性・高齢者の就業環境の整備のため、生産性革命・人づくり革命・働き方改革を推進するとともに、併せて、専門的・技術的な外国人受入れの制度の在り方について、早急に検討を進める必要があると考える。
在留期間の上限を設定し、家族の帯同は基本的に認めないといった前提条件の下、真に必要な分野に着目しつつ、制度改正の具体的な検討を進め、今夏に方向性を示したいと考える。菅官房長官、上川法務大臣におかれては、各分野を所管する関係省の協力を得て、急ぎ、検討を開始いただきたい。」
外国人労働力については、内閣官房において、タスクフォースを早急に立ち上げるべく調整しております。
以上です。