国会に入る安倍晋三首相=国会内で2018年3月12日午後5時、丸山博撮影

 安倍晋三首相は12日、財務省の決裁文書を巡る調査結果を受け、麻生太郎副総理兼財務相の進退について「全容解明へ調査を進める責任を果たしてほしい。信頼回復へ組織を立て直すため、全力を挙げて取り組んでもらいたい」と辞任を否定した。そのうえで「行政全体の信頼を揺るがしかねず、行政の長として責任を痛感している。国民に深くおわびする」と陳謝した。首相官邸で記者団に語った。

 これに先立ち、麻生氏は財務省で「私は進退は考えていない」と記者団に明言した。改ざんに関しては「財務省理財局の一部職員により行われた」と繰り返し、自身は前日の11日に事実を知ったと述べた。菅義偉官房長官は記者会見で、官邸が官僚人事を掌握していることが官僚の「そんたく」につながったとの指摘に対し「ありえない」と反論した。

 官邸は首相の盟友の麻生氏を擁護し、あくまで財務省理財局の責任にして幕引きしようと躍起になっている。菅氏は「(決裁文書の)本文はほとんど変わっていない。私は(改ざんではなく)書き換えだと思う」と述べた。公明党の山口那津男代表は「立法府の軽視で断じて許されない」と記者団に語り、改ざんを批判したが、麻生氏の続投には理解を示した。与党幹部は「麻生氏が国会できちんと説明できるかどうかだ」と指摘した。

 これに対し、野党は「国会の前提を覆す前代未聞の事態だ。財務省だけで(改ざんを)判断することはあり得ない」(立憲民主党・福山哲郎幹事長)と反発している。立憲、希望、民進、共産、自由、社民の野党6党の幹事長・書記局長らは12日会談し、麻生氏と首相の責任追及で一致。首相の妻昭恵氏や佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問を求めることも確認した。

 自民党のベテラン議員は「麻生氏を辞任させないなら、佐川氏の国会招致をのむしかないだろう」と述べ、このままでは問題は沈静化しないと懸念を示した。【小山由宇、村尾哲】