トランプ氏は13日朝にツイッター上でティラーソン氏の解任を発表した後、ホワイトハウスでの会見で同氏の「知性」に敬意を表し、「レックス(ティラーソン氏)とはうまくいっていた」と強調。本人も解任を歓迎しているとの見方を示した。一方、ティラーソン氏は同日発表した声明で、米国民や国務省職員、外交官らに向けて感謝の言葉を述べたが、その中にトランプ氏の名前はなかった。声明でトランプ氏に言及したのは、「正午すぎに大統領専用機から」解任の件で電話があったと述べた部分だけだった。
政権内部のある高官は、トランプ氏が北朝鮮との首脳会談や貿易分野でのさまざまな交渉に向けて人事刷新のタイミングを計ったと指摘。9日の時点でティラーソン氏に退任を求めていたと語った。ホワイトハウスの別の高官は、ケリー大統領首席補佐官が本人に解任を伝えたと述べたが、具体的な日時は示さなかった。ゴールドスタイン国務次官は声明で、ティラーソン氏が正式な解任を知ったのはトランプ氏のツイートからだとしたうえで、「本人には職にとどまる意思が大いにあった」と述べた。この声明の数時間後に、ゴールドスタイン氏自身も解任された。
トランプ政権からはこの2週間で、ゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長やホープ・ヒックス広報部長ら主要人物4人の辞任、解任が相次いでいた。
ティラーソン氏の後任にはポンペオ中央情報局(CIA)長官が指名された。トランプ氏は13日、記者団に「ポンペオ氏とは波長が合う。非常にいい関係だ」と話した。CNNが情報筋から得た情報によると、ホワイトハウスでは昨年の秋以降、ポンペオ氏をティラーソン氏と交代させる人事が検討されていた。
トランプ氏とティラーソン氏は当初からさまざまな外交政策で意見が食い違っていた。昨年秋、ティラーソン氏がトランプ氏を「間抜け」と呼んでいたと報じられて同氏の怒りを買ってから、溝が埋まることはなかった。ティラーソン氏はこの発言をきっかけに、ケリー氏をはじめとするホワイトハウス内の味方を失って孤立していたとされる。
トランプ氏に近い情報筋によれば、ティラーソン氏がトランプ氏を支持せず、独断で外交政策を進めようとしていた姿勢は明白で、トランプ氏もそれを感じていたという。トランプ氏の娘婿、クシュナー大統領上級顧問やヘイリー国連大使との対立も伝えられていた。また、企業幹部出身のティラーソン氏が進めてきた国務省内の大胆なリストラに対し、職員や外交官からの批判も強まっていた。
事情に詳しい人物2人の指摘によると、北朝鮮との首脳会談をいつ、どのように開催するかをめぐる意見の対立が、解任の決定的な要因になったという。ティラーソン氏は13日早朝にアフリカ歴訪から帰国したばかり。帰国の機内では記者団との会話で、米朝首脳会談に向けた準備に強い自信と意欲を示していた。