学校法人「森友学園」を巡る文書改ざん問題での佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問は、慎重な首相官邸側を、世論の反発を懸念する与党側が押し切る形になった。長期政権下で続いていた官邸主導の「政高党低」に変化の兆しも見える。【村尾哲、水脇友輔】
安倍晋三首相と公明党の山口那津男代表は20日、首相官邸で会談し、信頼回復に努めることで一致した。山口氏は佐川氏の証人喚問について「与党として衆参で協議して決める」と伝え、首相も了承した。
与党には対応が後手に回り、内閣支持率の急落を招いた官邸への不満がある。官邸は「佐川氏を呼べば、野党は首相の妻昭恵氏の招致も求める」と国会招致自体に消極的だった。官邸の消極姿勢を乗り越えたのは自民党の二階俊博幹事長ら与党側の危機感だった。自民党幹部は「証人喚問をしないと世論が収まらない」と指摘。来春の統一地方選をにらみ、世論に敏感になっている公明党も後押しした。
大島理森衆院議長は13日、議長公邸で二階氏ら自民党幹部と会談。「佐川氏の国会招致しかない」との認識で一致した。党幹部が「昭恵氏に波及する」と懸念を示すと、大島氏は「書き換え問題と昭恵氏は関係ない。切り分けて野党と話をすべきだ」と助言した。
二階氏はその頃、周辺に「審議拒否の打開には佐川氏招致しかない。国会のことは党で決める」と漏らしている。党国対も昭恵氏の招致拒否を明確にすることで、折り合いをつけた。自民党の森山裕国対委員長は20日の記者会見で「国民が不審に思う点を重点的に解明する」と証人喚問の意義を強調した。
安倍政権は堅調な内閣支持率を背景に官邸主導を続けてきた。2015年に消費税の軽減税率導入を巡り、慎重派の野田毅党税調会長を更迭したのはその象徴だ。今回の問題をきっかけに、官邸と党の関係が変われば、9月の党総裁選の行方にも影響は避けられない。