北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長は、28日までの4日間、中国を訪問して、習近平国家主席と初めての首脳会談を行い、中国側によりますと、朝鮮半島の非核化に向けた意思を示した上で、来月末の南北首脳会談やその後の米朝首脳会談に意欲を見せました。ただ、北朝鮮側の発表では、朝鮮半島の非核化をめぐるやり取りについては、一切、触れていません。中国国営の新華社通信によりますと、北朝鮮のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長は28日までの4日間の日程で中国を訪問し、習近平国家主席と初めての首脳会談を行いました。

この中で習主席は、ことしに入ってから朝鮮半島情勢に前向きな変化が見られると歓迎したうえで「われわれは朝鮮半島において非核化を実現するという目標を堅持するとともに、平和と安定を守り、対話を通じて問題を解決する」と述べ、中国政府の従来の立場を強調しました。そして「中国は引き続き朝鮮半島問題で建設的な役割を果たし、各国とともに努力して情勢の緩和を進めたい」と述べました。

これに対してキム委員長は「祖父のキム・イルソン(金日成)主席と父親のキム・ジョンイル(金正日)総書記の遺訓に従って、朝鮮半島の非核化の実現に力を尽くすのはわれわれの一貫した立場だ」と述べ、朝鮮半島の非核化に向けた意思を示したとしています。そのうえで「われわれは南北関係を和解と協力の関係に転換させることを決心した。アメリカとも対話をして首脳会談を行いたい」と述べ、来月末の南北首脳会談や、5月までに開かれる見通しの史上初の米朝首脳会談に意欲を見せたということです。

さらに、米韓両国について「わが国の努力に応えれば、平和の実現のために段階的かつ同時に措置を講じ、朝鮮半島の非核化の問題は解決することができるだろう」と述べたということです。一方、北朝鮮側も国営の朝鮮中央通信を通じて発表し、それによりますと、会談では中朝両国の友好関係の発展や朝鮮半島情勢の問題など、重要な懸案について突っ込んだ意見交換が行われたということです。

この中でキム委員長は「中国側と頻繁に顔を合わせて友情を厚くし、戦略的な意思疎通と戦略・戦術的な協力を強化していかなければならない」と述べた上で、習主席に北朝鮮訪問を招請し、快諾されたとしています。ただ、朝鮮半島の非核化をめぐるやり取りについては一切触れておらず、中国側の発表とは温度差も見られます。キム委員長が首脳会談に臨んだり外国を訪問したりしたのは、2012年4月に名実ともに北朝鮮の最高指導者となって以来これが初めてです。

中朝国境で北朝鮮列車をNHK取材班が確認

北朝鮮と国境を接する中国東北部の遼寧省丹東では、日本時間の午前6時半すぎ、キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長を乗せたとみられる列車が駅に入るのを、NHKの取材班が確認しました。列車は30分ほど駅にとどまったあと、日本時間の午前7時ごろ、国境にかかる橋を渡って北朝鮮に戻りました。丹東では27日、中朝国境の橋を望む場所にある多くのホテルで宿泊が制限され、28日の朝早くからは、駅周辺の広い範囲で車の通行が規制されるなど、厳しい警備態勢が敷かれていました。

キム委員長 これまでの要人会談

北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長は、2012年に名実ともに最高指導者に就任して以降、外国を訪問したり、首脳会談に臨んだりしたことはありませんでしたが、ピョンヤンを訪れた友好国の要人や代表団と、会談を行ってきました。キム委員長が外交デビューしたのは、みずからが最高指導者に就任した2012年、中国共産党で対外交流を担う中央対外連絡部の部長だった王家瑞氏との会談でした。

その後、中国の要人としては、同じ2012年に全人代=全国人民代表大会の副委員長だった李建国氏と、2013年に国家副主席だった李源潮氏と、そして、2015年に共産党の最高指導部メンバーの政治局常務委員だった劉雲山氏と、それぞれ会談しています。

また、ほかの友好国との間では、2013年にシリア・アサド政権の与党バース党の代表団と意見を交わしたのに続いて、2015年にキューバ国家評議会の第1副議長と、2016年にも、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長の特使と、それぞれ会談し、友好関係を確認していました。

一方、韓国との間では、2011年にキム・ジョンイル(金正日)総書記が死去したのに伴って弔問のため北朝鮮を訪れた、キム・デジュン(金大中)元大統領のイ・ヒホ(李姫鎬)夫人などと面会してあいさつを交わし、今月5日には、大統領府のチョン・ウィヨン(鄭義溶)国家安保室長をトップとする、ムン・ジェイン(文在寅)大統領の特使一行と会談し、南北関係の改善に向けた姿勢を強調していました。