[ニューヨーク 6日 ロイター] – ニューヨーク外為市場では米中貿易摩擦への懸念からドルが下落した。3月の米雇用統計で雇用の伸びが鈍かったこともドルの重しとなった。

トランプ米大統領は5日、中国に対する1000億ドルの追加関税の検討を通商代表部(USTR)に指示したと表明。これに対し中国商務省は、米国が保護貿易主義的な行動に固執するなら国益保護のために「いかなる代償を払っても」新たな包括的措置を講じるとの立場を示した。

これを受けドルは安全通貨とされる円とスイスフランに対し下落。中国商務省の高峰報道官が6日の記者会見で、中国は米国の追加関税措置に躊躇なく対応すると述べたこと受け、ドルは下げ足を速めた。

この日は米雇用統計のほか、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の講演も注目を集めていたが、市場は米中間の貿易摩擦の高まりをより大きく意識。テンパス・コンサルティング(ワシントン)の外為トレーダー、フアン・ペレス氏は「外為市場では米経済成長により大きな影響を及ぼす可能性のある中国との貿易摩擦が注目を集めている」とし、このため「パウエルFRB議長が経済は良好との認識を示し、緩やかではあるものの利上げが実施されることを示唆したものの、市場はこれに反応しなかった」との見方を示している。パウエル議長はこの日の講演で、FRBはインフレの制御に向け利上げを継続する必要がある公算が大きいとの見解を示した。

午後の取引でドル/円JPY=は0.5%安の106.89円。ドルは対スイスフランCHF=でも0.5%下落し、0.9587フランとなっている。主要6通貨に対するドル指数.DXYは0.4%低下の90.12。ユーロ/ドルEUR=は0.4%高の1.2282ドル。

3月の雇用統計では非農業部門の就業者数が前月比10万3000人増となり、伸びは2月の32万6000人から減速。市場予想の19万3000人増も下回り、6カ月ぶりの小幅増となった。ただ時間当たり賃金は前月比0.3%増、前年比2.7%増となった。

キャピタル・エコノミクス(トロント)の首席米国エコノミスト、ポール・アッシュワース氏は、賃金の伸びはコアインフレ率と同様になお抑制されているとしながらも、「雇用の伸びは加速する傾向にあり、賃金の伸びも上向いている」としている。

ドル/円
NY終値 106.91/106.95
始値 107.38
高値 107.40
安値 106.78

ユーロ/ドル
NY終値 1.2281/1.2285
始値 1.2239
高値 1.2290
安値 1.2221