先週来、中国と米国の通商摩擦が波紋を広げている。関係者の発言を克明にフォローしているわけではないから、何が本筋で何がブラフなのかさっぱりわからない。そんななかでトランプ大統領の、主にツイッターを使った発信が世界中で不安と疑念と懸念を巻き起こしている。中国の輸入品500億ドル相当に25%の関税をかけるという方針を示した後で中国が、対抗措置として同額の米国からの輸入製品に25%の関税をかけると発表。これを受けて大統領は即座に対象商品の額を「1000億ドルとするように通商代表部(USTR)に指示した」とツイートした。これを受けてマーケットは株式市場も為替市場も一時的に大混乱に陥った。

これに対して中国が間髪を入れずに対抗措置を講ずると再度発表したのはいつものこと。水面下で交渉が進んでいるかどうかよくわからないが、本格的な交渉を前にして米中の言葉のやり取りは激しさを増す一方だ。そんな中でトランプ大統領は「中国が先に屈服する」と予言してみせる。さらには「どんなことがあっても習近平主席とは良好な関係を維持できる」と思いやりをこめて全世界に発信する。ブルーンバーグによるとトランプ大統領の経済チームの高官らが8日午前、テレビのトーク番組に出演。「対中関税政策を擁護し、貿易戦争は回避できる」と述べている。そして「これらの動きをより長期的な成長戦略の一環」と位置付けたという。トランプ大統領の発言が大統領の個人的な思いつきではないと証言している。

本当に中国は負けるのだろうか。北朝鮮の金正恩委員長との非公式会談で、朝鮮半島の非核化に向けた明確な意思を表明しなかった習近平主席である。豪勢なプレゼントの数々をみると、金正恩委員長に対して何がしかの引け目があるようにも見える。米国主導の経済制裁に賛成した非を北朝鮮に示したかったのかもしれない。通商問題でトランプ大統領が意外に強気なのは、習近平主席の意外に脆い内面を見抜いているせいではないか。そんな邪推をしたくなるほど強気で楽観的だ。そうでないとすれば、これがトランプ大統領の得意とする“ディール外交”の真髄なのか。ひょっとして近い将来、通商問題で譲歩する見返りに習主席は、金正恩委員長に対する豪華なプレゼントについてトランプ大統領の了承を得ていたりして•••。ディール外交は意外性が取り柄。ありえない話ではないかもしれない。