トランプ大統領がいきなり米朝首脳会談の中止を表明した。合わせて金正恩委員長あての公開書簡を発表した。この書簡には米国人3人の釈放に対する感謝が記されていると同時に、首脳会談への扉が開かれていることが記されている。一方、米国の核兵器は強大であると北朝鮮を脅し、平和への道を閉じるのは北朝鮮の繁栄はないとも言っている。まさにアメトムチ。トランプ大統領はこの書簡を自ら認めたとメディアは伝えている。これを受けて世界中が首脳会談中止に遺憾の意を表明した。世界中の指導者もメディアも間違っている。今回の中止は単なる駆け引きの一環に過ぎないと、個人的にはそう見ている。
トランプ大統領も金正恩も習近平も、ある意味では新しい時代の指導者なのかもしれない。世界中の世論を平気で巻き込んでいる。世論を舞台に半ば公然と政治的駆け引きを繰り広げている。首脳会談を中止するという今回のトランプ大統領の判断も、世論を舞台にした駆け引きの一環に過ぎない。同大統領は国際的な世論に訴えることによって北朝鮮に軟化を促している。いや、それより前に金正恩委員長は韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領を利用し、中国の習近平主席まで取り込んでトランプ大統領に圧力をかけた。そのお返しが今回の会談見送りという同大統領のポーズである。だから会談はいずれ開催される。朝鮮半島の非核化の目は消えていない。
問題はこうした大仕掛けの舞台を利用しながら、いずれはどちらかが国際世論の大勢に逆らえなくなってくることである。金正恩委員長の建前だけの非核化かトランプ大統領の「完全(complete)かつ検証可能(verifiable)で、不可逆的(irreversible)な核廃棄(dismantlement)」か、米朝首脳の壮烈な駆け引きがこれからも続く。国際世論を形成する我々一人一人が、この問題に対するスタンスを明確にしておくべきだろう。個人的にはCVID以外に道はないと思っている。心配なのは国際世論を巻き込んだ交渉では、中間選挙を11月に控えているだけにトランプ大統領に分がなさそうなことだ。北朝鮮が首脳会談に向けて軟化すると同時に、これからトランプ氏がCVIDを形骸化しながら歩み寄りを始めそうな気がする。首脳会談の中止は新たな懸念を呼び起こした。