北朝鮮の朝鮮中央通信は25日、北東部豊渓里(プンゲリ)の核実験場が完全に廃棄されたと報道し、坑道などの爆破場面の写真を公表した。白煙が上がったり、木造の施設がバラバラになったりした様子などが写っている。だが専門家からは「政治ショー」との見方とともに、放射性物質が漏れ出す可能性を指摘する声も上がっている。
写真には、2009~17年に実施された第2~6回の核実験で使われた坑道の入り口で、北朝鮮当局者が記者団に説明する様子や坑道などが爆破される瞬間などが収められている。
これに先立ち、核兵器研究所は24日深夜に発表した声明の中で「二つの坑道がいつでも核実験できる水準だったことを国内外の記者団が確認した」と伝えた。実験場にある四つの坑道のうち、未使用の第3、第4坑道も爆破されたことを強調したとみられる。
韓国・聯合ニュースが伝えた現地記者からの情報によると、北朝鮮側は第3坑道前の小川で取材陣に水を飲んでみるよう提案し、販売されているミネラルウオーターと比較して「より飲みやすい。放射能汚染がない」と説明した。また、付近の軍兵舎にツバメの巣があることを「放射能がない」ことの証拠と主張。「アリも放射能に敏感なのに(ここは)すごく多い」と説明したという。
今回の廃棄について、星正治・広島大名誉教授(放射線生物・物理学)は「爆破はただのショー。飛散した砂ぼこりに放射性物質が含まれている可能性があり、リスクが高い」と指摘。廃棄ならば「コンクリートで固める方が有効」と話す。北朝鮮側は動物の存在を挙げて安全性を主張したが「汚染された地域だからと言って動物が全ていなくなるわけではない。本当に安全だと示したいなら、(放射線量をはかる)線量計を持ち込ませるべきだ」と批判した。韓国や英国メディアによると、現地入りした記者が持っていた線量計は北朝鮮入国時に当局に没収されていた。
フランスの核実験などを研究する真下俊樹・国学院大非常勤講師は爆破の写真を見て「砂っぽい土壌。放射性物質で汚染された地下水が流れ出す恐れはないか」と懸念する。
真下講師がかつて調査したアルジェリアのサハラ砂漠にある実験場では、仏が実施した地下核実験13回のうち4回、放射線漏れの事故を起こした。うち1回では熱で溶けた岩と共に汚染された土砂が噴出。黒い帯状に固まった跡からは、半世紀がたつ今も高い放射線量が検出される。「たとえ封じ込められていても内部の放射線量は高い。そこに触れて汚染された水が流れ出る可能性は否定できない」と懸念する。【竹内麻子、ソウル堀山明子】