[ワシントン 6日 ロイター] – 米商務省が6日発表した4月の貿易収支の赤字額は前月比2.1%減の461億9900万ドルと、2017年9月以来7カ月ぶりの低水準となった。産業用資材・原料や大豆の輸出増加に伴い全体の輸出高が過去最高水準に達した。
3月の赤字額は当初発表の489億5600万ドルから472億1000万ドルへ改定された。
実質の貿易赤字を示すインフレ調整後の貿易赤字は774億7300万ドルと、3月の781億5500万ドルから縮小した。第1・四半期の平均である824億5300万ドルを下回っている。この実質貿易赤字の水準が保たれれば、貿易は第2・四半期国内総生産(GDP)の押し上げ要因となる可能性がある。貿易は第1・四半期GDPにほとんど寄与しなかった。
製造業や個人消費、労働市場関連の好調な指標を背景にアトランタ連銀は、GDPの伸び率が今年、年率で4.0%を超えるとの見通しを示している。第1・四半期GDPは2.2%増だった。
ただ、トランプ米大統領が進める保護主義的な貿易政策は好調な経済見通しに影を落としている。大統領は3月、国内の鉄鋼生産者が不当な競争にさらされていると主張し、鉄鋼とアルミニウムに輸入関税を課した。さらに前週、課税対象から除外していたカナダとメキシコ、欧州連合(EU)からの鉄鋼・アルミ輸入にも課税することを決めた。メキシコは米国の農産物や工業製品の幅広い項目を対象に報復措置を施した。カナダは米国のウィスキーやオレンジジュース、鉄鋼、アルミニウムなどに輸入関税を課す意向を示した。
メキシコ、カナダ、EUへの米国の輸出は今年はこれまで2桁台の伸びを示している。
RDQエコノミクス(ニューヨーク)の首席エコノミスト、ジョン・ライディング氏は「欧州、カナダ、メキシコの貿易戦争のリスクを高める戦略は理解に苦しむ」と指摘。ウエルズ・ファーゴ証券(ノースカロライナ州)のシニアエコノミスト、サム・ブラード氏は、米経済の足取りは堅調で、成長は第2・四半期に加速するとしながらも、「貿易を巡る緊張の高まりが見通しに対するリスクとなっており、これにより経済が成長軌道から外れる恐れがある」と警告した。
中国との貿易戦争のリスクもある。米中は制裁措置と対抗措置の応酬を繰り広げており、互いに最大1500億ドル相当の輸入品に関税を課す姿勢を示している。
トランプ氏は、主要な貿易相手国が米国に付け込んでいると主張。ただエコノミストらは、輸入関税によって米国内の物価が上がるほか雇用が減るとし、米経済への悪影響を指摘している。ドルが主要な準備通貨であるほか、1兆5000億ドル規模の減税政策で財政赤字が悪化してることを含め米国の貯蓄率が低い点を挙げ、輸入関税による貿易赤字縮小への影響は限定的だという。
政治的に問題になることが多い中国に対するモノの貿易赤字は8.1%増の279億6200万ドルだった。メキシコは29.8%減の56億5200万ドル。カナダとの貿易赤字は7億8500万ドルだった。
4月はモノとサービスの輸出が0.3%増の2112億4500万ドルと、3カ月連続で増加し、過去最高水準となった。燃油や石油製品などの産業用資材・原料が13億4600万ドル増えたことが押し上げ要因だった。大豆は3億4000万ドル増加。トウモロコシも同様の伸びを示した。一方、民間航空機は28億4400万ドル減少した。
中国への輸出は17.1%減だった。
モノとサービスの輸入は0.2%減の2574億4400万ドル。内訳は、消費財が27億8600万ドル減。携帯電話やその他の家財用品が21億9500万ドル減少したことが重しとなった。自動車は9億300万ドル減少した。一方、原油は9億7700万ドル増加した。
中国からの輸入はほぼ横ばいだった