アメリカのヘイリー国連大使は、世界各地の人権問題に取り組む国連人権理事会について、「慢性的なイスラエルへの偏見を抱えている」などと批判して離脱することを表明し、同盟国であるイスラエル寄りの姿勢を鮮明にしました。

アメリカのヘイリー国連大使は19日、首都ワシントンの国務省で記者会見し、世界各地の人権問題に取り組む国連人権理事会について、「慢性的なイスラエルへの偏見を抱えている。イスラエルを非難する決議は、北朝鮮やシリアに対するものより多い。これは人権の観点ではなく、政治的な偏見で動いている明らかな証拠だ」などと批判しました。

そのうえで、トランプ政権の改善の要求が満たされなかったとして、アメリカが離脱することを表明しました。

その一方でヘイリー大使は、「改革が行われれば再び喜んで参加する」とも述べ、国連人権理事会に対し、改革に取り組むよう促しました。

国連人権理事会をめぐってトランプ政権は、これまでイスラエルと対立するパレスチナ寄りで、中立性が保たれていないと批判し、離脱を辞さない姿勢を示してきました。

アメリカは、去年10月にもユネスコ=国連教育科学文化機関が「反イスラエル的だ」として脱退していて、改めてイスラエル寄りの姿勢を鮮明にした形です。

ただ、発表を受けて国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が声明を出し、「イスラエルの擁護を何よりも優先する嘆かわしい政策の表れだ」と批判するなど、反発も予想されます。

国連事務総長「とどまるほうが望ましい」

国連のグテーレス事務総長は直ちにコメントを発表し、「アメリカにとってとどまるほうがはるかに望ましい。人権理事会は、世界の人権の啓発と擁護に極めて重要な役割を果たしている」と述べました。グテーレス事務総長のコメントはアメリカへの批判は避けて再考を促すとともに、国連にとって人権の啓発が主要な任務であることを改めて強調するものとなっています。

国連人権高等弁務官「残念なニュースだ」

国連のゼイド・フセイン人権高等弁務官は19日、ツイッターで声明を出し、「驚きではないかもしれないが、残念なニュースだ。現在の世界の人権状況を考えれば、アメリカは取り組みを強化すべきで、後退すべきではない」と述べてアメリカの対応を批判しました。