Gina Chon
[ワシントン 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 米国が推進する移民政策は、残酷なばかりか、同国経済にも悪影響を及ぼす。不法入国した親子を引き離すことはモラルに反するだけでなく、費用もかかる。

拘束するための費用はわずか1カ月で最大1億ドル(約110億円)にも及び、不法移民を国外退去させるための予算32億ドルをむしばむ可能性がある。しかも、移民削減が米国経済に及ぼす長期的影響はここに含まれていない。

不法入国者の急増を受け、トランプ大統領は従来の強硬な移民政策を最近さらに強化している。国境を越えて米国にやってくる不法入国者の大半は、暴力から逃れてきた中米出身者だ。今年3月、その数は前年同月比で203%増加した。

米司法省は4月、南西部の国境を違法に越えて入国する者は誰に対しても刑事責任を問い、訴追する不寛容政策を発表。その結果、引き裂かれる不法入国者の親子が増えている。

この残酷な措置により、わずか4月半ばから5月末までの期間に1995人の子どもが1940人の親から引き離された。米シンクタンク「アメリカン・アクション・フォーラム」の試算によると、不法移民を捕まえ、拘束し、国外退去させる費用はミッドレンジで1人当たり約2万2000ドルかかる。

もし米保健社会福祉省に移送される子どもたちを支援するコストを考慮するなら、親子4000人を今年いっぱい拘束するのにかかる費用は2億ドルに上る可能性がある。

政府は、歳入が減っている中、こうした費用の増加を招くことになる。今年実施された共和党の減税により、5月は財政赤字が66%増加。また、未処理の移民案件が大量に残されており、結審するのに平均で2年を要する。2016─17年に不法移民の逮捕件数が30%増加したにもかかわらず、国外退去件数が昨年6%減少した一因である。

移民は米国経済にプラスに働く点を踏まえれば、これはばかげた政策のダブルパンチと言える。

米調査機関ピュー・リサーチ・センターの研究によると、新たに1700万人以上の移民流入がなければ、米国の労働年齢人口は、2015年から2035年までに800万人近く減少する。

不法移民1100万人全員を退去させるならば、向こう20年で国内総生産(GDP)が1.6兆ドル縮小することになると、前出のアメリカン・アクション・フォーラムは指摘する。

家族を分断し外国人を国外退去させることは、いろいろな意味で、米国第一主義とは反対の道を歩むことになる。