[ロンドン 2日 ロイター] – イングランド銀行(英中央銀行)は2日、金融政策委員会(MPC)で政策金利を0.50%から0.75%に引き上げることを決定した。決定は全会一致。ただ来年に控える欧州連合(EU)離脱(ブレクジット)の明確な方針が定まらない中、一段の利上げは急がない姿勢を示した。

0.75%への利上げは予想通りだったが、ロイターがまとめたアナリスト調査では、利上げは全会一致ではなく7対2で決定されると予想されていた。

英中銀は、経済は現在は「制限速度」上限近くで巡航しているとし、将来的に国内要因によりインフレ圧力が高まる可能性があるとの見方を表明。ただ英経済は2016年のEU離脱の是非を問う国民投票以降、成長が鈍化しており、英商工会議所(BCC)などはEU離脱を巡る先行き不透明感が高い中での利上げは正しくないとの見方を示していた。

これに対しカーニー総裁は、EU離脱による影響は多岐にわたり、その多くは金利が少なくとも現在の水準にあることを必要とするものになるとの見解を表明。中銀は離脱が円滑に行われるとの予測に基づき政策運営に取り組んでいるとし、「先行き不透明感がいつの時点で解消するのか把握できないため、完全に確信が得られるまで待ち続け過ぎることは誤りとなる」と述べた。

ただカーニー総裁は、EU離脱で英経済が衝撃を受けた場合は金融政策に影響が及ぶ可能性はあるとの考えを改めて示した。

一部では世界的に貿易戦争のリスクが高まっていることが慎重になる理由となるとの見方も出ている。これについて中銀は、世界的な貿易に対し「保護主義的な政策がマイナスの影響を及ぼし始めた暫定的な兆候」が出ているとの見方を示した。

アバディーン・スタンダード・インベストメンツの投資ストラテジスト、ルーク・バーソロミュー氏は「今回の利上げを正当化するに十分な進展は見られたが、今後も利上げがあると考えるべきではない」とし、「間近に迫るリスクを踏まえると、英中銀が向こう数カ月で追加利上げに踏み切るとはまったく考えられない」と述べた。

中銀はまた、今回の金融政策委員会で初めて中立金利の推計値を公表。いわゆる均衡実質金利(r*)は0─1%となるとした。カーニー総裁は中銀の政策目標として考えるべきではないとしながらも、「r*」は緩やかに上昇していくとの見方を示した。

1年後のインフレ率は2.15%、2年後は2.09%、3年後は2.03%になると予想。それぞれ前回5月に示した予想から引き上げた。中銀はインフレ目標を2%に設定している。

経済成長率については、2018年は1.4%、19年は1.8%、20年は1.7%になると予想。18年と20年は5月時点の予想を据え置いたが、19年については1.7%から上方修正した。

賃金の伸びについては、18年末時点で年率2.5%となると予想。5月時点の予想をやや下方修正した。伸びは19年末までには3.25%になるとし、これについては従来予想を据え置いた。