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米国内政治で混乱を進んで受け入れる姿勢、世界経済にも適用
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米政府による関税や制裁でトルコやロシア、中国の市場は混乱
トランプ米大統領は、自身が望む結果を世界中で手に入れるためには、海外の金融市場の痛みを容認する姿勢だ。混乱を進んで受け入れる大統領のスタンスは、米国内政治ではトレードマークとなっているが、それが世界経済のレベルでも浮き彫りとなった形だ。
トランプ大統領は10日、トルコ経済が既に通貨危機にあえぐ中で、同国からの鉄鋼・アルミニウム輸入の関税率を倍に引き上げる決定を下した。わずか数日前にはロシアに対して新たな制裁を発表したばかりで、両国の市場は大きな混乱に見舞われた。また、米中が繰り広げる関税合戦のあおりで、大半のアジア市場は10日までの週の取引を下落して終えた。
大統領は、海外市場の下げが米国に波及する事態を懸念するよりもむしろ、米政府による関税賦課や制裁の標的となった国々が経済的損失を被る状況に歓声を上げている。トルコ産鉄鋼・アルミ輸入関税率の引き上げに言及した10日のツイッター投稿では、トルコ・リラは「われわれの非常に強いドルに対し、急速に下げている!」と記した。
1週間前には、対中関税が「誰もがこれまで予想したよりもずっとうまく機能している」として、大統領は中国市場の下落を喜んで取り上げるとともに、米国の「市場はかつてないほどに強力となっている」とコメントした。
各国に対する一連の攻撃は、トランプ大統領が海外市場の動揺をものともしておらず、そうした混乱によって各国が自身の意図に屈しざるを得ない状況となるよう期待していることを示唆する。
トランプ大統領が自身の成果を誇示する指標として好んで取り上げる米国の株価と雇用統計も好調が続き、こうしたアプローチを後押しする形となっている。S&P500種株価指数は海外市場の下落の影響を多少受けつつも、今年初めに付けた過去最高値近辺で推移している。
しかし、大統領の戦略が持続的な成果を上げるかどうか、エコノミストは疑問を投げ掛ける。ブッシュ(子)元政権で大統領経済諮問委員会(CEA)のチーフエコノミストを務め、現在はアメリカン・アクション・フォーラムのプレジデント、ダグラス・ホルツイーキン氏はトランプ大統領について、「彼は瀬戸際政策を好む」とした上で、「この手法には大きなリスクがある」と語った。
原題:Trump Embraces Market Pain With Little Concern of Contagion(抜粋)